"「一緒に浪人」は嘘だった――俺に届いた特待生通知" 第6話
コンテストの台とライバルの
が吹き抜ける、パシフィコ横浜の巨なコンベンションホールには、全国から選抜された数百名の学エンジニアと研究者たちが集結していた。
『全本学データサイエンス・イノベーション・コンテスト』。
各学の学部・学院が威信をかけて発した械学習モデルやデータ分析基盤を競いう、国内最峰の学コンペティションだった。
俺たちの都科学チームが提したのは、都部の交通流データをリアルタイムで解析し、突発な事故や気象変による渋滞を未然に回避する『分散協調型トラフィック・ルーティング・エンジン』。代、彩佳の模試対策のために途で投げしかけていたあの研究が、黒田教授の指導とチームメンバーの尽力によって、産業応用レベルのプロダクトへと結実していた。
ポスターセッションの準備を終え、エントリーシートのパンフレットをめくっていた俺は、あるの名に目を留めた。
『英学 総報学部 神・希研究グループ』
彩佳の通う私学だった。
「瀬、どうした? りいでもいるのか?」
チームリーダーの学院・佐藤先輩が声をかけてきた。
「いえ……の同級がているみたいです」
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「英の神チームか。あそこは評判がいぞ。リーダーの神怜(かみや れい)は学部だが、すでに複数の企業でインターンを経験している実力派だ。今回のテーマは『消費ビッグデータを用いたリアルタイム需予測』らしい」
予選のプレゼンテーションが始まると、神の発表は確かに群を抜いていた。仕ての良いスーツを着こなし、淀みのない滑らかな語りで審査員の質問を確に捌いていく。スライドのデザインも洗練されており、会の聴衆を惹きつける圧倒なプレゼン能力を持っていた。
そして、その神の隣で、緊張した面持ちで発表用スライドの操作を担当していたのが、希彩佳だった。
彩佳の役割は、神が提示する論理の裏付けとなるデータ集計と処理の担当としてクレジットされていた。だが、彼女が画面を見つめる瞳には、どこか怯えと焦燥のが張り付いていた。
午の予選が終わり、昼休憩のホワイエを歩いていたとき、背から声をかけられた。
「瀬優馬君、だよね」
振り返ると、の青が穏やかな笑みを浮かべてっていた。神怜だった。そのすぐろで、彩佳が気まずそうに俯いている。
「神さんですね。午の発表、素らしかったです」
俺がを差しすと、神は力く握り返してきた。
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「ありがとう。君たちの分散ルーティングの論文も読ませてもらったよ。代から着を得ていたっていうのは本当かい? あの系列データの欠損値補正のアイデア、数学に非常に美しいアプローチだね。あれは君が組んだんだろう?」
神の瞳には、打算や見しではなく、純粋な技術者としての敬が宿っていた。
「原型はのに考えたものです。でも、先輩たちのアドバイスがなければ形になりませんでした」
「謙虚だな。午の本選、いライバルになりそうだ」
神が爽やかに笑ったその横で、彩佳が取り繕うようにを挟んできた。
「ね、怜君! 優馬って昔からこういう暗い作業だけは得だったのよ! 私がのときも、数学の面倒な計算は全部優馬にやらせてたんだから!」
彼女は神ので、自分と俺の過の『親密さ』をアピールし、優位にとうとしているようだった。しかし、その言葉を聞いた神の表から、すっと温度が消えた。
神はゆっくりと彩佳の方を向いた。
「……希さん。の過の努力を『面倒な計算をやらせていた』なんて言葉で片付けるのは、研究者として極めて品がないよ。君が担当した午のデータクレンジングのスクリプト、まだれ値の処理になエラーが残っているって、さっき審査員から指摘されたばかりだろ。
の評価を気にしている暇があるなら、午の修正コードをでもく見直したらどうなんだ」
氷のように徹な叱責だった。
彩佳の顔が瞬で真っ赤になり、唇を噛み締めて黙り込んだ。
神は俺に向き直り、「失礼したね。午、全力で戦おう」と告げると、彩佳を連れて控へと戻っていった。
俺はその背を見送りながら、静かに息を吐きした。神は厳しい男だが、自らの仕事に責任を持つ本物のだった。代の俺のように、彼女の甘えを無批判に受け入れ、代わりにを汚してやるような甘い男ではなかったのだ。