みかん小説
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"息子が遺した証拠" 第5話

夜の追跡、そして法律事務所の

午分。松本駅のロータリーは、交じりの夜が吹き抜けていた。 駅交番の灯の、柱のにを潜めた源郎は、鳥打を目に被り、じっと駅のを見つめていた。

いた。 駅広の計台の、美咲が傘をすぼめ、さな鞄を胸に抱えてっていた。 肌寒そうに肩をすくめながら、折、通りをき交うのヘッドライトに目を凝らしている。

数分、台のいセダンがしぶきをげてロータリーへと滑り込んできた。 島田の奥さんが言っていた通り――名古ナンバーのだった。 運転席からびしてきたのは、代半とおぼしき、髪で清潔のある青だった。作業着のに黒いウィンドブレーカーを羽織っている。 青は美咲のにつと、々とをげ、助席のドアを丁寧にけた。美咲がさく会釈をして乗り込む。

(本当だったのか……!) 源郎の胸に、たい氷の刃が突き刺さった。 しかし、傷に浸っている暇はなかった。セダンが発するのを見届けると、源郎は待していたタクシーの列の先両へと駆け寄り、部座席にび込んだ。 「の、あのい名古ナンバーのセダンを追ってくれ! 頼む!」 運転はギョッとしたようにバックミラー越しに源郎を見たが、老の鬼気迫る表にただならぬものをじ取ったのか、無言で頷いてアクセルを踏み込んだ。

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いセダンは、駅の繁華を抜け、国をへとっていく。 歓楽のホテルへ向かうのか――源郎の拳が、ズボンの膝のでくなるほどく握り締められた。 もしそうなら、健太の魂はどうなる。翔太の未来はどうなる。

だが、セダンが曲がったのは、郊の静かな宅のれだった。 灯もまばらな暗い夜。がまったのは、古い階建ての雑居ビルのだった。 源郎はメートルほどでタクシーをり、に濡れながら建物のへと滑り込んだ。

板に掲げられていた文字を見て、源郎は息を呑んだ。【倉田法律事務所】

「法律事務所……? なぜ美咲さんが、こんな所に……」 階のフロアにはかりが灯り、ブラインドの隙から内の様子が覗いていた。 源郎は濡れたアスファルトを踏みしめ、柱のからそっと窓のを伺った。

きな会議用テーブルのには、話帳ほどもある分いファイルや図面、そして何枚もの事写真が所狭しと広げられていた。 テーブルを囲んでいるのは。 美咲。 先ほどを運転してきた、あの青。 そして、老鏡を額に押しげ、険しい表で類にペンをらせる、髪交じりの弁護士らしき初老の男性。

の顔には、倫や密会の甘い空気など微もなかった。 誰も笑っていない。

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美咲は唇を噛み締め、何かの図面を指差しながら、必に弁護士に訴えかけている。 青は拳を握り締め、悔しさに顔を歪めながら類をめくっている。 それはまるで、絶対に負けられない戦いの作戦会議そのものだった。

源郎は青の横顔を凝した。 (待て……あの男、どこかで見覚えがあるぞ……) 記憶の糸を繰り寄せる。 の、あのの告別式。 参列者のい列の最尾、本堂の隅にち、作業着に黒い喪章をつけて、目も憚らずに肩を震わせて泣いていた若い職。 源郎に何かを話しかけようとして、黒田部のたい線に射竦められ、逃げるようにりった、あの青――!

その、事務所のドアがき、美咲と青がへとてきた。 がりになった暗の、青の震える声が、源郎のに届いた。

「美咲さん、本当にすみません……! 俺が……俺があの、もっとく告発していれば、健太さんはあんなことにならなかったのに……!」 「さん、自分を責めないで。悪いのは、健太さんを殺したあの会社と、黒田部よ」

美咲の凛とした、だが慟哭を孕んだ声が夜気を切り裂いた。 そして、美咲がバッグから取りした枚の類の束。 灯ののに浮かびがったその表題の文字を読んだ瞬、源郎の全の血が、逆流した。

【告発状:恵建設における構造計算偽装および耐震補事正の記録――作成者:柏健太】

健太は、事故でんだのではない。 息子は、会社の巨なを暴こうとして――命を奪われたのだ。

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