"三千円の温泉旅行" 第9話
万千百円
「万千百円?」
幹事さんが聞き返した。
美代さんがうなずいた。
「私たちがるはまだ請求は来ていませんでした。でもで矢野さん本から聞いた方がいて……分の料理と、お酒や盛りも入っていたそうです」
福田さんは額にを当てた。
「参加者はじゃったんじゃろ?」
「予約はで入れていたそうです。当のキャンセル分も請求されたと」
留さんがあきれた。
「なんでも予約したんだい」
矢野夫はさな声で答えた。
「数がい方が……旅館の扱いがいいとったから」
「誰の扱いだい」
その言葉に、部の何かが目を伏せた。
矢野夫は、級旅館へくことそのものを楽しみにしていたのではない。
「町内会の旅で鶴亀楼へった」と周囲へ話せること。
派な旅館で数を引き連れ、自分が取り仕切っているように見えること。
それが事だったのだ。
福田さんは静かに言った。
「町内会として鶴亀楼を予約した事実はない。したがって、積からは円もせん」
矢野夫が顔をげた。
「そんなの困ります! 私はカードでて替えたんですよ!」
「頼んだ者がおらん」
「でも皆さんべたでしょう!」
すると美代さんがをげた。
「私たちがべた分について、もし必なら自分たちで負担します」
そのにいた婦部のたちもうなずいた。
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しかし、副会が突然をいた。
「いや、それは必ありません」
妻が振り返った。
「あなた?」
副会は顔をげなかった。
「内が誘ったんです。皆さんは町内会の旅だとって参加した。しかも福田会も承していると聞かされていた。皆さんに負担させるのは違うといます」
「万円よ!」
「だからこそだ」
副会はようやく妻を見た。
「自分で勝に予約したものを、町内会のに払わせるわけにはいかない」
矢野夫の顔が真っ赤になった。
「あなたは私の方じゃないの?」
「方をすることと、違っていることまで正しいと言うことは違う」
その言葉で、矢野夫は黙った。
福田さんは話をめた。
「もうつ。昨夜LINEに流した“会計の使い込み”というき込みについてじゃ」
矢野夫の肩がわずかにいた。
「静子さんがを使い込んだ事実はない。それどころか、あんた自が流した写真に正しい内訳が全部写っとる」
誰かがさく息を吐いた。
「町内会の全員が見られる所にいた以、同じ所で訂正してもらう」
しばらくして、矢野夫は絞りすように言った。
「……分かりました」
「それから婦部の世話役については?」
矢野夫は拳を握った。
「辞めます」
副会も続けた。
「私も今回の件について責任があります。なくとも次の役員改選までは、副会として残務をしますが、そのは候補しません」
福田さんはすぐには答えなかった。
「役職を辞めれば済む話ではない。だが、まずは嘘を訂正することじゃ」
私はそれまで黙っていた。
皆の線がこちらへ向いた、私は帳簿を閉じた。
「皆さん、ご配をおかけしました」
それだけ言ってをげた。
そして、もうつだけ付け加えた。
「千円の旅でも、皆さんと緒に同じお湯につかれたことが、私には分贅沢でした」
誰かが「そうだね」と言った。
その声を聞いて初めて、肩の力がし抜けた。