みかん小説
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"三千円の温泉旅行" 第1話

案内状の目

「千円? 会、それはいくら何でも貧乏くさすぎません?」

の初め、公民館のに響いたその声に、私は膝のの帳簿から顔をげた。

私は森川静子、歳。から町内会の会計を任されている。数字が得というほどではないが、夫の務から「おは円の違いでも放っておけない性格だから向いている」と言われ、引き受けた仕事だった。

そのの役員会では、毎恒例のの帰り旅について話しっていた。町内会の福田さんが、隣町にある温泉宿「恵の湯」を提案したのである。

「うちの男が継いどる宿でな。建物は古いが湯はいい。今は町内会の皆さんなら、昼飯と入浴込みで千円でやると言うてくれたんじゃ」

私はすぐに帳簿をいた。世帯から毎千円ずつ集めてきた旅積は、か分で万千円になっている。参加予定者をとして計算すると、貸切バスが万千円、恵の湯が万千円。残る万千円は来度へ繰り越せる。

数字を説すると、福田さんは何度もうなずいた。

しかし、副会の妻で婦部の世話役をしている矢野夫だけは、元をゆがめたままだった。

「千円のお昼なんて、どうせおにぎりとお漬物でしょう? 町内会の旅なのよ。

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もうし格好がつくところにしないと、副会の妻として恥ずかしいわ」

福田さんが苦笑した。「栗ご飯と瓶蒸しをすと言うとったぞ。値段をくしてくれるのは、わしの男だからじゃ」

「そういう内びいきみたいなのも、どうかといますけど」

矢野夫はそう言いながら、私の帳簿には度も目を落とさなかった。

私は言い返さず、鉛で数字をもう度確認した。旅は誰かが自するためのものではない。に度、所のたちが同じバスに乗り、同じものをべ、ゆっくり湯につかる。そのためにしずつおを積みててきたのだ。

最終に、席していた役員の賛成でき先は恵の湯に決まった。

「決まったことなら仕方ありませんわ」

矢野夫はそう言ったものの、納得していないことは顔を見れば分かった。

その夜、私は茶のの座卓で旅案内をいた。い役所勤めをしていた夫の務が、湯みをつ持って向かいに座った。

「何をそんなに悩んでいる」

「案内状よ。集を先にくか、き先を先にくか」

務は鏡をしげ、私のきを眺めた。

「俺は役所で、通や案内をいてきたけどな。目から先を読まないはとい。だから、番事なことは目にいた方がいい」

なるほど、と私はった。

そして、番にきめの文字でこういた。

《き先 隣町温泉・恵の湯 昼・入浴付き 千円》

そのに、集所、午発、決、持ち物をき加えた。

さらに別には会計報告も添えた。積万千円。貸切バス万千円。恵の湯万千円。次度繰越万千円。

福田会と幹事さんには内容を確認してもらい、押印ももらっている。

「これなら誰が読んでも分かるわね」

「目を読めばな」

務が冗談めかして言ったので、私は笑った。

翌朝から、軒ずつ町内を歩いて案内状を配った。

まさか数週、その目が、私自を守る番きな証拠になるとはってもいなかった。

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