"貧乏と俺を捨てた元カノ、次期社長との婚約に隠された誤算" 第17話
父親の答え
正社は偶然このにいたわけではなかった。レオンが会社の役員との事会を終えるにわせ、い打ちわせを予定していたのだという。俺たちと流するつもりはなかったが、入で健の声が聞こえ、様子を見に来たらしい。普段は穏やかなが、息子の顔を見てくため息をついた。
「父さん、どういうことだ。俺が次の社じゃないって、こいつらが言ってる」
「会社から通が届いていただろう。説の面談にも来なかったのはおだ」
健はをけたまま黙り込んだ。美が横から「何かの違いですよね」と割って入ったが、正社は彼女に会釈しただけだった。私な所で社員の処遇を話すべきではないと判断したのだろう。彼は健に、翌朝会社で改めて説すると告げた。
「つだけ、ここではっきりさせておく。会社は私個の持ち物ではない。社員と取引先に責任がある。息子だからという理由だけで、代表を任せることはできない」
その言葉は、健だけでなく俺の胸にもく響いた。正社はこれまで何度も、息子を信じたい気持ちと経営者としての責任ので揺れていた。そのがようやくした答えだった。誰かを罰するためではなく、会社を続けるための選択なのだ。
「じゃあ誰が次なんだよ」と健が絞りすように言った。
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正社はレオンを見てから、俺に線を移した。「来度の代表候補として取締役会が承認したのは、島涼さんだ。正式な就任続きは予定どおりめる」
美のから箸が落ちた。健は俺の顔を見たまま、しばらく瞬きもしなかった。に『収万円の貧乏』と笑われた俺が、今は彼の父親の会社を引き継ぐ準備をしている。けれどその事実を、勝ち誇って伝える気にはなれなかった。
正社は鞄から枚の名刺を取りし、俺に差しした。まだ印刷の試作品で、肩きの部分は空になっている。「役職は変わっても、仕事は変わらんよ」と言った。俺は受け取らず、正式に就任するまで取っておいてほしいと頼んだ。社という名だけを先にもらっても、何もできるようにはならない。
レオンは「涼くんは、現のの話を聞くところから始めたんだ」と静かに言った。「最初は失敗もした。だけど失敗を隠さず、直し方を考え続けた。その積みねを、会社のたちが見ている」。俺は褒められても落ち着かなかったが、なくとも選考の理由が血筋ではないことは伝わったとった。
「そんな馬鹿な。こいつ、ただの部の社員だろ。俺は社の息子だぞ」
「だからこそ、おには何度も会を与えた」と正社は答えた。「だが事な会議を欠席し、部の声を聞かず、会社のの扱いでも説が必になった。
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親としておを見捨てるつもりはない。しかし代表に指名することは別の話だ」
内の空気がくなったのをじ、俺は員に「騒がしくしてすみません」とをげた。隣の席の客は黙って事を続けている。誰かの失敗を見世物にするために、ここへ来たわけではなかった。俺は健にも席をれて話すよう促したが、彼は子からかなかった。
俺は正社の隣にち、「この話は、会社でしましょう」と言った。健の仕事の問題を美ので晒したところで、会社が良くなるわけではない。レオンも「今はここまで」と区切りをつけた。員が配そうにこちらを見ているのに気づき、俺は謝って席を片付けた。
それでも美は俺を呼び止めた。「涼、本当に次の社になるの? どうして言ってくれなかったの」
俺は彼女を見た。、俺の未来に値札をつけただ。今になってその値札をき換えようとしているように見えた。