"母の葬儀写真に現れた女――銀の花に隠された秘密" 第6話
族写真の裏側
私はに戻った。恵はカウンターの向こうで、を片づけていた。今の会話が何事もなかったように続いている。ガラスに映っていた姿について尋ねると、彼女は「誰もにいなかった」と言った。
その晩、母の団で修司と由美に、恵と会ったことを話した。修司は驚いたが、由美は目を伏せたまま、何も言わなかった。
「由美、ってたの?」
「お母さんから、し聞いていました」
「いつ?」
「のです。お義母さんが、私にだけ話したんです」
母は、由美に古い写真を見せた。恵が度に来たこと、母が謝れなかったこと、もう度会いたいことを打ちけたという。由美は、修司にも私にも伝えないでほしいと頼まれた。
「お義母さんは、紀子さんに話すつもりだったといます。でも、あなたはお母さんの話を聞くと、すぐに答えをそうとするから」
私は反論できなかった。母が何かを隠していると気づいたら、私はきっと追及していた。母が話す準備をするに、傷をいていたかもしれない。
修司は、父のアルバムをもう度見直した。結婚式の写真に写っていた赤ん坊を、父も抱いている写真が見つかった。裏には「初節句」とある。父は本当に、恵を自分の子として育てたのだ。
「父さんは、恵さんのことを嫌っていたわけじゃないんだな」
「母は、父がったあとに引き取られたと言った」
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「でも、写真には父さんも写ってる」
アルバムの最に、族でへった写真があった。私と修司が幼い。母の膝には、赤ん坊が。父はその横で笑っている。写真の端に、千恵子がっていた。彼女は、私たちに見えないようにしれている。
写真を裏返すと、父の字でかれていた。
『でかけた最初の。美代は、やっと笑った。』
私は、父が恵を拒絶したのではなく、母が父の親族に恵を奪われることを恐れて、を引かせたのかもしれないとった。だが、それなら母はなぜ、恵に何も説しなかったのだろう。
由美は、母から預かった封筒をした。修司にも私にも渡すよう頼まれていたが、葬儀が終わるまでけないでと言われたらしい。には、母のが通あった。通は恵へ。もう通は私と修司へ。
『紀子と修司へ。あなたたちに話すのが遅くなりました。私は恵を産んだ母ではありません。でも、あの子を育てた母でした。そのつを、私はいあいだ同じことだとっていました。恵が真実をったあと、私は説することより、許してもらうことを望んでしまった。だから何も言えなかった。あの子が許すかどうかは、あの子が決めることです。あなたたちにも、姉として受け入れろとは言いません。ただ、あの子を秘密のままにしないでください。
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』
母の言葉を読み終えたとき、仏壇のに置いていた族写真がに落ちた。
ガラスが割れ、写真の表面に細いひびがった。
割れた線は、母と恵のをまっすぐ通っていた。
「お母さんは、あの子を守ろうとした。でも、守る方法を違えた」
私がそう言うと、修司はうなずいた。
「なら、俺たちはどうする」
「恵さんに、母のを届ける」
由美が、封筒を握りしめた。
「恵さんは、受け取ってくれるでしょうか」
私は窓のを見た。団の向かいにある灯のに、黒いの女がっていた。ののブローチが、夜のでかすかにっている。
女は度だけ、をげた。
次の瞬、灯が消えた。
由美は、修司が母に頼まれて役所の続きを伝ったとき、戸籍の部に自然な訂正跡を見つけたと話した。だが、母は「昔の類だから」と説し、詳しく語らなかった。修司はく尋ねるのをやめたという。彼は母の言いつけを守ったのではなく、母が困っている姿を見たくなくて、質問を止めたのだろう。族の沈黙は、誰かが命じるだけでまれるものではなかった。
修司は、父がくなったときのことをいした。父は最期まで母に「恵のことを頼む」と言っていたそうだ。修司は当まだ幼く、が分からなかった。母はその言葉を聞いて、しばらく父のを握っていたという。
族ので、恵のは完全に消されたわけではない。名をさないまま、皆がそれぞれの形で抱えていた。
修司は母のを封筒に戻し、封をし直した。「これを恵さんに渡すのは、俺たちの責任じゃなくて、母さんの遺言みたいなものだな」。私は「遺言にしてしまうと、また母の都になる」と返した。を渡すかどうかも、恵に決めてもらおうと話しった。
修司はその夜、父の写真を枚だけ自分のへ持ち帰った。
修司は父の写真を、斎の棚の番に飾った。