みかん小説
本棚

"母の葬儀写真に現れた女――銀の花に隠された秘密" 第3話

父のらない娘

修司は、母ので見つけた写真を見ても、すぐには信じなかった。

私たちは母の台所で、写真をに置いて向かいった。修司は父がくなった、母を支える役目を自分が担ってきたとっている。実際、通院の送迎やの修理は彼が引き受けた。私は方に嫁いでいた期がく、母のそばにいたのは修司夫婦だった。

「姉貴は、母さんが話せなかったことを、今さら責めたいのか」

「責めるんじゃない。何があったのかりたいの」

「母さんには母さんの事があったんだろ」

「事があったからって、秘密にされたの気持ちは消えない」

修司は反論しかけて、写真の赤ん坊を見つめた。彼もまた、母が自分に見せていた姿しからなかったのだ。私たち姉弟は、同じで育ちながら、母の別々の顔を見ていた。

「母さんが若いころに、親戚の子を預かったんじゃないのか」

「このき方を見て。『美代の子として育てる』ってある」

「昔はそういうこともあったんだろ」

「じゃあ、私たちには姉がいたの?」

修司は答えなかった。彼は母に似て、困ったことが起きると黙り込む。父は私が歳のときにくなった。母は父を「数はないけれど、族いの」と話していた。父がらない子どもを母が育てていたのなら、その族の形は、私が信じていたものとは違う。

広告

私は病院に話し、古い記録が残っているか尋ねた。個報だからと断られたが、母の遺品理でてきた類について相談したいと伝えると、担当者が折り返してくれた。記録そのものは示できない。ただ、昭に母が産した記録があること、届の母欄は母の名義で提されていたことは確認できた。

母は私をんだあと、して修司を産んだ。母の話では、それが最初の産だった。

では、最初の赤ん坊はどこへったのか。

そのの午、母の団の管理が訪ねてきた。

管理の佐藤さんは、母がこの団に越してきたころから以の付きいだった。母は周囲に迷惑をかけまいとするで、病院にくときも誰にも頼らなかった。だが、佐藤さんは何度も母の買い物袋を持ち、球を替え、植鉢の世話をしてくれた。私はそのお礼を言いながら、母が千恵子というを呼んでいたことを確かめた。

「お母さまは、あの方が来るは朝から玄関を掃除していましたよ。いつものお茶菓子も分用して」

「千恵子さんとは、どんな話を?」

「聞いたことはありません。でも帰るとき、お母さまが必ず『今はありがとう』と言っていたのを覚えています」

母は、誰かを待っていた。私はらない母の習慣を、隣から教わっていた。

広告

母の部に、く通っていた女性がいたという。病院へ入る、週に度ほど買い物を伝っていた。管理はその女性を「千恵子さん」と呼んでいた。

「親戚の方だとっていました。お母さまも、昔からの友だと」

「どんなでしたか」

「髪で、背はくない方。いつものブローチをつけていましたよ」

の。

集写真の女は、葬儀のだけ現れたのではない。母のそばに何度も来ていたのだ。

管理は、千恵子が母の入院に度だけ訪ねてきたことも話した。面会を断られたあと、封筒を預けて帰ったという。私は管理で、その封筒を受け取った。表には私の名がいてある。

『美代さんの女、紀子さんへ。お母さまがくなったあとで構いません。もしあなたがりたいとったら、浦の樺喫茶に来てください。曜の午にいます。』

今は曜だった。

私は封筒を握りしめた。母が隠したものをるのは怖かった。それでも、らないままではいられない。

その夜、私は父の古いアルバムをした。族写真のに、同じのをつけた女性が写っている。母と父の結婚式の写真だ。母は無垢姿で、父の隣に座っている。そのろの隅に、千恵子がさく写っていた。

彼女は笑っていなかった。腕のに、い布に包まれた赤ん坊を抱いていた。

写真のガラスに、私の背の部が映った。

そこに、母がっていた。

母は私ではなく、アルバムの赤ん坊を見つめていた。そして、だけをかした。

「ごめんね」

振り返ると、部には誰もいなかった。

翌、私は千恵子に会うことにした。

帰宅して父の写真を見直すと、父が写る写真の何枚かに、さないが置かれていた。母は毎、恵の誕のに同じを買っていたようだ。父もそのことをっていたのだろうか。写真の裏には何もかれていない。ただ、父のが赤ん坊の背を支えている。そのを見ていると、父が恵を拒んだという母の説は、まだ何かを隠している気がした。

父のアルバムを閉じると、表の裏にい片が挟まっていた。そこには「美代へ、恵のことを緒に育てよう」と父の字で記されていた。付は、恵がまれた翌だった。母はで秘密を抱えたのではない。父もっていたのに、なぜ恵はをれたのか。その答えをるため、私は父の古い類も探す必があるとじた。

私は父の古い友にも話をかけた。父は恵のことをったあと、親族から養子の話を持ちかけられ、く反対したらしい。父の友は「美代さんが自分を責めていた」と話した。夫婦のどちらかが決めたことではなく、とも恐れながら選んだのだとった。

父の字を見て、私は初めて、族の秘密が母の罪ではなかったと受け止めた。

アルバムの匂いは、のの押し入れに似ていた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: