"銀座の384万円" 第6話
封鎖された自ドア
夜の帳がりた座丁目。たいが吹き抜ける通りの喧騒から遮断された「グラン・レガリア」の内は、い絨毯とな造りの壁によって、墓所のような静寂を保っていた。
個「ロイヤルスイート」ので、義族はデザートの最のスプーンをに運び、満げに腹を擦っていた。
「いやあ、美かった! 美央のやつ、泣きそうな顔しててったわね」
義母のは、のコーヒーをみ干し、で汚れたナプキンをテーブルのに無造作に放り投げた。その品な仕には、嫁を徹底にいたぶり、法な額を押し付けたことに対するろめたさなど微もなかった。あるのは、力関係を誇示し、い通りに支配したという歪んだ征だけだった。
「本当ですよ、お義母さん。あのバッグを置いていかなかったのは癪ですけど、になればどうせをげて実に届けてきますって」
義弟の妻が、ハンドバッグからコンパクトを取りして化粧直しをしながら嘲笑った。
「だろ? あいつは昔から気がさくて、俺の言うことには絶対に逆らえないんだからさ。さあ母さん、こうぜ。美央がもうレジで支払いを済ませて、でタクシーを拾って待ってるはずだ」
夫の達也は嫌でちがり、仕てのいいスーツの着を羽織った。
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彼らはテーブルのに散乱する最級キャビアの空き瓶や、本のロマネ・コンティの空き瓶を振り返ることもなく、優雅な取りで個の扉をけた。
廊を抜け、エントランスロビーへと続く理の通を歩く。
しかし、正面玄関のガラス製自ドアのに達也がった瞬、異変が起きた。
普段であれば滑らかににくはずのいガラス扉が、ピクリともかないのだ。
「……あ? なんだこれ。センサーが壊れてんのか?」
達也がをかざし、を踏み鳴らした。その刹、カシャリという無質な子音がエントランスの井から響いた。
あらかじめ堂島総支配が央監から隔操作した、防犯用の斉磁ロックが作した音だった。
「おい、ドアがかないぞ! 誰かいないのか!」
達也がガラスを拳で叩いた直、ホールのの壁際から、体格のいい黒のセキュリティスタッフ名が音もなくみてきた。彼らは言も発することなく、エントランスのを塞ぐように、筋肉質の分い胸板で壁を作った。
その異様な気配に、義弟夫婦が顔を見わせて退りした。
「な、何なのよ……急に」
が眉をひそめたその、セキュリティスタッフのを縫って、堂島総支配が静かに歩みてきた。そのには、先ほど個のに投げ捨てられていたはずの、あの黒革の伝票バインダーが握られていた。
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「お客様。お会計がまだお済みでございません」
堂島の声は、最級ホテルの執事のように慇懃無礼で、しかし切の慈を拒絶する氷のような響きを帯びていた。
「はあ? 何言ってんだよ支配」達也はで笑い、ネクタイをえながら胸を張った。「さっき先にてった俺の妻が、もうカードで払っただろ? くそのロックを解除しろよ」
も横からを尖らせてを挟んだ。
「そうよ! 嫁が全額払うことになってるの! の確認を客のせいにするんじゃないわよ、このポンコツ!」
しかし、堂島は眉毛本かさなかった。彼はに持ったバインダーをき、達也の目のに突きつけた。
「いいえ。先ほどご退されたお客様からは、確な拒絶の表示をいただいております。『自分は切みいしておらず、支払いの義務もない。注文した者たち自に全額を請求せよ』と。従いまして、当ではツケ払いや代表者への請求は切認められません。本のご代、計百万千円。今このでの、即決済をお願い申しげます」
堂島の酷な宣告が、エントランスの理に鋭く反響した。
「は……? い、今ここで……?」
達也の顔から、急速に血の気が引いていった。
「ふ、ふざけるな! あいつが払うって言ったんだ! 俺たちに払えるわけないだろ!」
「お支払いいただけないは、当といたしましても相応の対応を取らざるを得ません」
堂島のたい線が、達也の胸元の社章を捉えた。
逃げのない檻のに閉じ込められたことを、彼らはようやく肌でじ始めていた。