"山奥の身代わり花嫁" 第18話
つの鍵
台から週、のはしずつ復旧した。避難していたたちはへ戻り、敷の広にはまた静けさが戻った。堂には、お礼を言いに来るが増えた。私は「皆で用した事です」と答え、井さんや佐伯さん、名簿を作ってくれたさんの名を挙げた。誰かが頑張っただけでは、あの夜は越えられなかった。
武さんは堂の仕事が終わるに来て、「しお話しできますか」と言った。窓のには、で洗われたが見えた。彼はしばらく言葉を探してから、「私はずっと、美緒さんを守りたいとっていました」と話し始めた。「でもあの夜、のたちを支えていたのは美緒さんでした。守る側と守られる側を決める必はないんですね」。
私は頷いた。武さんはさな箱ではなく、本の鍵を机に置いた。つは敷の玄関、もうつは堂の裏の鍵だった。「仕事の鍵は、これからも美緒さんが責任を持って使ってください。もうつは、族として緒に暮らしたいという私の願いです」。彼は息をえ、「私と結婚してください」と言った。
私はすぐに答えられなかった。嬉しくないからではない。見いのに父から結婚を命じられた自分と、今ここで返事をしようとしている自分が、あまりに違っていたからだ。私は武さんに「結婚しても堂の仕事を続けたいです。
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自分の料も、自分の名も持っていたい」と伝えた。彼は「もちろんです。それが美緒さんでしょう」と笑った。
「はい。私も、武さんと族になりたいです」。にした瞬、肩から力が抜けた。彼は私のを取り、でしばらく黙っていた。窓のでは職たちが材を運び、厨からは夕の支度をする音が聞こえる。特別ななのに、いつもの暮らしの音が途切れないことが嬉しかった。
結婚式はの初め、敷の広でうことになった。派な披宴ではなく、のたちとさんに事を振るうさな式だ。静さんは昔の無垢を入れしてくれると言い、私は装を借りることにした。さんは「嫁が厨へ逃げ込まないように見張るからね」と笑い、井さんと緒に祝い膳の献を考えてくれた。
式の、弁護士から父の件について連絡があった。百万円の受領にある私の署名は、父が代したと認める方向で話がんでいるという。返還の話しいは続いていたが、父は私へ直接謝ることを避けていた。姉の虚偽投稿についても、会社の損失の部を分割で支払う案がていた。私は続きの内容を確認し、式とは切りしてめてほしいと頼んだ。
ところが、父から届いた返事は「結婚式で族として話しう」
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というものだった。弁護士は式への無断の来訪を控えるよう通したが、父は取りわなかった。武さんは式を延期することも提案した。私は首を横に振った。「もう、あのたちの都で私のの付を変えたくありません」。
式の夜、私はしく買った鞄から古い帳を取りした。最初のページには、にさんから教わった煮物の作り方がいてある。最のページには、堂の来の予定と、結婚式に来てくれるたちの名が並んでいた。私は帳を閉じ、の装の横へ置いた。誰が来ても、自分の言葉で迎えようとった。
翌朝、無垢に袖を通した私へ、静さんが「本当にお綺麗です」と言ってくれた。私は鏡のの自分を見て、ようやく笑った。けれど式が始まるし、のが騒がしくなった。係のが顔を変えて入ってきた。「美緒さん、ご族だと名乗る方が、どうしてもへ入れろとおっしゃっています」。