みかん小説
本棚

"山奥の身代わり花嫁" 第10話

姉の写真

翌朝、私は予約画面の記録を事務担当のさんに見せた。さんは嫌がらせの能性があると言い、予約刻と連絡先を保してくれた。の仕事は予定どおり続けたが、話が鳴るたびに肩が張った。自分の居所がられたことより、ここで働くたちを巻き込むかもしれないことが怖かった。

昼過ぎ、さんから話があった。「耶さんがに来たよ。あんたのことをずいぶん聞いていった」。姉は京で付きっていた男性と別れ、町へ戻っていたらしい。さんは居所を教えなかったが、姉はの宿泊施設を紹介する雑誌に載った私の写真を持っていたという。写真は業の記事に添えられたもので、私は堂ので井さんたちと並んでいた。

「美緒が社夫になったって本当なの」。姉はそう尋ね、さんが「自分の仕事をしている」と答えると、で笑ったそうだ。私の族は、私が料をもらって働いていることより、誰のにんでいるかをりたがる。さんは「何を言われても、あんたが働いてきたことは変わらない」と言って話を切った。

その夜、姉からメッセージが届いた。「久しぶり。の暮らしはどう? あんなきなだなんて聞いてなかった」。私は返事をせず、仕事の類を片づけた。分ほどすると、「もともとは私に来た話でしょう。

広告

しくらいお礼をしてもいいんじゃない」と続いた。私はその画面も保し、武さんには自分から話した。

武さんは「連絡を断ちたいなら断っていいし、返事をしたいなら止めません」と言った。私はし考え、「今の仕事やまいは私自の契約です。おを渡す理由はありません」と度だけ返信した。姉はすぐに「偉くなったね」と返してきたが、私は通を切った。これ以説しても、理解してもらうための言葉が増えるだけだとった。

翌、堂に若い観客が来て、私を見ながらひそひそ話した。会計のとき、が「お姉さんの婚約者を取ったですか」と尋ねた。私は瞬言葉を失ったが、事実と違うとだけ答えた。客は気まずそうにをていき、残された私はレジのでしばらくち尽くした。

さんに頼んで確認すると、姉は交流サイトに私の写真を投稿していた。文章には「妹に婚約者と実の財産を奪われた。両親を捨て、今では持ちの妻を名乗っている」とかれていた。さらに、私が姉になりすまして武さんへづいたように見える、加されたメッセージ画面まで添えられていた。

私は画面を拡した。偽のメッセージに使われている写真は、何もに姉が私の携帯話で撮ったものだった。背景には実の台所が写っている。

広告

そこにかれた文面は、私が誰かに送った覚えのない言葉ばかりだった。「姉には内緒で会いたい」「お持ちだとっていた」。自分の顔の横に並んだ嘘が、気悪いほど自然に見えた。

武さんはすぐに投稿の保を指示したが、私は「まだ公表しないでください」と頼んだ。りに任せて反論すれば、の名も、働くの顔も、さらに広まるかもしれない。まずどこまで響がているか確かめたかった。その晩、宿泊棟の予約担当から、て続けにキャンセルが入っていると連絡が来た。

翌朝、予約管理画面の数字を見て息をのんだ。取り消された予約は、晩で件。堂の団体予約だけでなく、宿泊と体験を組みわせた族旅まで含まれていた。私は姉の投稿が、もう族だけの喧嘩では済まないところまで来たことをった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: