"山奥の身代わり花嫁" 第6話
客の鍵
私は受領を何度も見直した。名の最の「緒」の払いが自然で、私なら絶対にかない形になっていた。印は古い通帳に残っていたものと似ている。父が私の部の引きしを勝にけていたことをいし、指先がたくなった。
「今すぐ返事をしなくていいですよ」。武さんは類を机に戻し、弁護士の連絡先をにいて渡した。相談は彼の会社の顧問ではなく、私自のを確認できる別の窓を利用するよう勧められた。私は翌、町の法律相談へ話し、受領の写しを自分の元にも残した。父に直接問い詰めるのは、そのにしようと決めた。
さんにも類のことを話した。「おを渡していないのに受け取ったことにされているなら、そこだけは曖昧にしちゃ駄目だよ」。さんは、私が歳のとき初めてに来たのことを覚えていた。を卒業してすぐ働き始めた私が、与細を封筒のまま母へ渡そうとしていたので、自分の座を作るよう勧めてくれたのだ。
かの滞を引き受けるに、私はつのことを武さんに確かめた。部をいつでもられること。働くなら仕事の内容と料を決めること。そして結婚の返事を急がされないこと。武さんはどれにも頷き、「鍵は美緒さんが持っていてください」
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と言った。私はそこで初めて、かだけ残ると決めた。
れは庭に面したさな建物で、窓から所の煙突が見えた。部には机と本棚、古い気スタンドがある。私は鞄から帳をし、初めて自分のものだけを棚に並べた。実では、姉が帰省すると私の部が荷物置きになった。ここでは誰も断りなく扉をけない。
目の昼、私は堂の様子が気になって台所を覗いた。所の若い職がパンを片に図面を見ており、別の男性はカップ麺で済ませていた。が同じに休めるわけではなく、堂の調理担当はしかいない。繁忙期は昼を用できず、売の菓子だけで午の作業へ戻るもいるという。
蔵庫には、の鶏肉と曲がった参、根の葉が残っていた。私は静さんに「使う予定がなければ、今の昼に料理してもいいですか」と尋ねた。彼女は瞬驚いたが、「お客様に働かせるわけには」と断った。私は「伝いではなく、試しに分の仕事をさせてください。必なら正式に相談します」と言い直した。
調理担当の許を取り、材の保管状態を確認してから、私は炊き込みご飯と具だくさんの汁物を作った。を濃くしすぎず、力仕事のにはおにぎりをつ添えた。初めは慮していた職たちも、匂いにつられて集まってきた。
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「これ、残り物ですか」と若い男性が聞いたので、私は「今使ってほしかった材です」と答えた。
堂にさな笑い声が広がった。誰かが杯目を求め、別のが「午の現に持っていけるか」と尋ねた。私は数と作業を聞き、持ち帰り用の容器がりるか確認した。久しぶりに、何をすればいいか自分で考えられる所にっていた。
夕方、武さんが厨へ来た。「皆がんでいました。でも、今の分は仕事としてお支払いさせてください」。私は断りかけて、言葉をみ込んだ。ここでまた無償の働きになれば、実と同じことを繰り返してしまう。私はさく頷き、まず週、堂の昼について必な数と費用を調べたいと申した。
武さんは嬉しそうに見えたが、返事は慎だった。「調理担当とも相談しましょう。美緒さんの負担になってはいけません」。その夜、私は帳のしいページに「仕事として引き受ける条件」といた。初めて自分の労働に、自分で値段をつけるためだった。