"親族会議で追放された妻――翌朝、七枚のカードが全停止" 第1話
親族会議
「が宮田のこれからに、おみたいな女は必ない」
夫の翔平がそう言った、私は円卓の央に置かれた枚のを見ていた。
世田の敷にあるダイニングルームには、翔平だけでなく義父の正隆、義母の美智子、義弟夫婦、それに普段は正くらいしか顔をわせない親戚まで集まっていた。井からがるきなシャンデリアが、磨きげられたテーブルと、勝ち誇ったような彼らの顔を照らしている。
、私がこのに初めて入った、同じ部で義母は笑って言った。
「これからは本当の娘だとって暮らしましょうね」
あの言葉を、私はずっと信じようとしていた。
父も母もすでにく、きょうだいもいない私にとって、「族」と呼べるたちができることは、当の私がっていた以にきなを持っていたからだ。
翔平は子の背にもたれ、腕を組んだ。
「話は簡単だ。俺は婚する」
義母が私の反応を確かめるように顎をげた。首元には、の誕に私が贈ったダイヤのネックレスがっている。
「あなたも々分かっていたでしょう。翔平には、もっとふさわしい女性がいるのよ」
「ふさわしい、ですか」
私がそう聞くと、義母はで笑った。
「柄よ。学歴よ。脈よ。あなたには何もないじゃない」
親戚のがさく笑った。
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私はその顔を見ながら、をいした。
翔平と会った頃、彼の会社は社員数ほどのさな物流システム会社だった。きなを語る割には資繰りが苦しく、から追加融資を断られた直だった。
それでも私は、彼が苦労していることを責めなかった。
むしろ、何も持たないところから必に会社を育てようとしているなのだとった。
あの頃の私は疲れていた。
自分の名だけで億単位のがき、会議では笑顔で握したが翌週には敵に回る。そんな世界にくいすぎて、も位もらないたちので、ただ「紗良さん」と呼ばれて暮らしてみたかった。
だから結婚したも、自分の本当の仕事を詳しく説しなかった。
私は「資産運用関係の仕事をしている」とだけ話した。
翔平も義父母も、それ以聞こうとはしなかった。
理由は単純だった。
彼らにとって私は、翔平が連れてきたな女でしかなかったからだ。
「翔平は今や派な経営者よ」
義母が胸を張った。
「都内にこんなを持って、軽井沢には別荘もある。ブラックカードだって何枚も持ってる。あなたみたいに、何の肩もない女とはむ世界が違ってしまったの」
私は静かに義母の顔を見た。
世田のこの。
軽井沢の別荘。
ガレージに並ぶ台の。
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義母が常に使うカード。
義父が会員制ので見せびらかしているカード。
そして翔平が「俺の信用力の象徴だ」と言っていた黒いカード。
つつ、ので確認する。
彼らは、まだ何もらない。
「俺の会社だって、この数で売は何倍にもなった」
翔平が言った。
「結局、は能力なんだよ。おには理解できないとうがな」
「そうかもしれませんね」
私が答えると、義弟の妻が笑った。
「本当によね。最くらい泣いてすがればいいのに」
そこで翔平が、目のの類を指で押した。
「婚届だ。俺の欄と証欄はいてある」
その横にもう枚、が置かれていた。
婚、双方は相名義または第者名義の資産に対して当な権利主張をわず、それぞれ自己名義の財産について責任を負う。
さらに翔平側が用した確認文には、私が彼の会社や宮田の資産に切の持分を主張しないという趣旨までかれていた。
「慰謝料も財産分与もなしだ」
翔平は言った。
「おは自分の荷物だけ持ってていけ」
義母がねた。
「円も持っていかないでちょうだい。このにある物は全部、宮田のものなんだから」
その瞬、胸の奥に残っていた最のものが消えた。
りではなかった。
しみでもなかった。
私は、「いつか本当の族になれる」
と信じていた。
だが彼らは、私が差ししたものだけを族として受け取り、私自を度も族として見ていなかったのだ。
私はをもう度読んだ。
そして、テーブルのに置かれていたペンを取った。
翔平がわずかに眉をかした。
「……何だ。やけに素直だな」
私は婚届に署名した。
次に、にも署名した。
義母が満そうに笑った。
「最初からそうすればよかったのよ」
私はペンを置いた。
「分かりました」
それだけ言ってちがった。
翔平が勝ち誇った声を背に投げた。
「度と戻ってくるなよ」
私は振り返らなかった。
玄関脇には、あらかじめまとめておいたさなキャリーケースがつあった。
数枚。
パソコン。
母の写真。
私が自分で買った計。
持ちしたものは、本当にそれだけだった。
をると、黒いセダンが静かに待っていた。
部座席のドアをけた運転のが、私の顔を見て瞬だけ表を曇らせた。
「神崎様」
その呼び方を聞いたのは、ぶりだった。
私はに乗った。
「さん」
「はい」
「法務の黒田さんにつないで」
「承しました」
が静かにり始める。
窓の向こうで、私はもう度だけ敷を見た。
あのを「俺が建てた」と翔平は言った。
あの所を「宮田の財産」だと義母は言った。
私は膝ののバッグから、署名したの写真をいた。
そして話がつながると、封印していた声で言った。
「黒田さん。予定よりく終わったわ」
『……婚ですか』
「ええ」
私は目を閉じた。
「宮田に認めていた特例を、全部見直して」
話の向こうで、数秒の沈黙があった。
『すべて、ですね』
「全部よ」
その夜、彼らはまだらなかった。
自分たちが私をから追いしたのではない。
自分たちを守っていた唯の扉を、自分ので閉めたのだということを。