"愛人が妊娠、離婚を迫る夫が私の退職に大慌て" 第19話
自の朝、しい名刺
がまり始めたのある朝。 半のアラームが鳴るに、私は爽やかな目覚めを迎えた。 寝の遮カーテンをけると、澄み渡るれの青空が、京の並みをどこまでもく見渡していた。
キッチンにち、お気に入りの欧製の気ケトルにミネラルウォーターを注ぐ。 スイッチを入れると、数分でコトコトとよい沸騰音が鳴り響く。 引きしから取りしたのは、今朝のためにしく買い求めた、芳醇なりのコロンビア産コーヒー豆。 ドリッパーにセットし、ゆっくりと円を描くように湯を注ぐと、リビングいっぱいに豊かなアロマが広がっていった。
誰かの嫌を伺う必のない、完全な自由。 朝のメニューにケチをつけられることも、理尽な侮辱に怯えることもない。 トーストにバターを塗り、半熟の目玉焼きと鮮なレタスを添えて、静かにわう朝。 臓腑に染み渡るその美しさは、私自が自分の力で勝ち取った、尊厳のそのものだった。
支度をえ、ウォークインクローゼットから選びしたのは、仕ての良いネイビーの品なパンツスーツ。 姿見のにち、髪をブローして、ナチュラルだが凛としたメイクを施す。 代半ばの自分の顔を鏡で見つめ、私はさく微笑んだ。
『過ぎたら派なおばさんだ』『若作りして痛い』――かつて夫が浴びせかけた呪詛の言葉は、今の私のでは、ただのれな吠えに過ぎなかった。 肌には艶があり、瞳には確固たる自信のが宿っている。
玄関で黒のパンプスを履き、エルメスのブリーフケースをにする。 ケースの内ポケットには、先週刷りがったばかりの真しい名刺入れが入っていた。 名刺を取りし、指先でその文字をなぞる。
【武田業株式会社 取締役営業統括本部 野百】
「よし。今も頑張ろう」
オートロックのドアをけ、のよいが吹き抜けるエントランスへと踏みす。 自分のでを踏みしめ、自分の名でを切り拓いていく。 その圧倒な全能と幸福が、私の全を満たしていた。