"愛人が妊娠、離婚を迫る夫が私の退職に大慌て" 第3話
湯の笑と悪魔の企み
翌朝、私は腫れた目元をコンシーラーとファンデーションで入に隠し、午に社した。 社員たちが勤してくるの静まり返ったオフィス。 眠でいを抱えながら、湯でいブラックコーヒーを淹れていただった。
カツカツと、廊を歩く価なヒールの音がづいてきた。 続いて、聞き慣れた夫の能気な声と、甘ったるい女の笑い声。 は湯のドアがわずかにいていることに気づかず、すぐ脇の応接ブースのでち止まった。
「……で、昨の夜、あの女にちゃんと言ってくれたんですかぁ?」 甘くにかかった声。経理課の美咲だった。 歳。派な巻き髪に、胸元が調されたニット。仕事に頻繁にスマホをいじり、ミスをしては司に目を使って誤魔化すことで悪名い女性社員だった。
「言ったよ、言った! ももかの奴、呆然として言葉もない様子だったぜ」 徹が品に笑う声が、壁を伝って響いてくる。 「マジで俺たちの関係に気づいてなかったみたいだな。ウケるよな、もから続いてたってのに」
「あはは! 鈍なおばさん! でも徹さん、なんで継ぎも産めない良品みたいな女、今までさっさと捨てなかったんですか?」
美咲の放った『良品』という言葉が、私の臓をナイフのように抉った。
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息が止まりそうになるのを必に堪え、私は湯の壁に背を押し当てた。
「そりゃお、政婦代わりに便利だったからだよ。料理も掃除も文句言わずにやるし、何より営業の数字を引っ張ってくる能力だけはあるからな。クビにする義名分がなかったんだよ」 徹の酷な言葉が続く。 「婚したら、気まずいとか言って所に転職するって言いすかもしれないな。あいつが抜けたら、現の調が面倒くさいんだよな」
すると、美咲がくすくすとお腹を抱えて笑いながら、悪魔のような提案をにした。
「じゃあさぁ、婚したも、そのまま営業部として会社にタダ同然で置いておけばいいじゃないですか! 捨てるのはいつでもできるんだし」
「え? 会社に置いておくって、気まずくないか?」
「何言ってるんですか! 子供がまれたら、社の赤ちゃんの世話をさせればいいんですよ! あのおばさん、子供が欲しくてたまらなかったんでしょ? 育児の識くらいありそうだし、会社で仕事をさせながら、私たちの子供のおむつ替えやミルクの世話を押し付ければ鳥じゃないですか! 『継ぎの養育係』って言えば、罪滅ぼしにんで引き受けるんじゃないですかぁ?」
湯の奥で、徹の嘆したような声が響いた。 「すげえな美咲! お、めちゃくちゃいいじゃん! さすが俺の自の女だ! あいつに子守りをやらせて、浮いた当で俺たちは優雅にハワイにでも旅にこうぜ!」
ハハハ、アハハと、の劣な笑い声がフロアに反響する。 私の両は、爪が皮膚にい込んで血が滲むほど固く握りしめられていた。
――継ぎの養育係? ――私にの子供の世話をさせ、タダ働きで会社を回させる?
涙は、完全に蒸発していた。 胸の奥底で燃えがったのは、しみではなく、マグマのような漆黒の憤だった。 (いい気なものね……そうやって笑っていられるのも、今のうちよ) 私はえ切ったコーヒーを気にみ干し、静かに湯をにした。 私をとして扱わなかった報いを、骨の髄までいらせてやる。