"同窓会でビールを浴びた私に、51人の男が最敬礼" 第13話
の底のミシン音
それから半が過ぎた、翌の初。
方都からくれた、関のあいに建つ古い縫製。埃っぽい敷内には、使い古された型ミシンの規則正しい属音が朝から晩まで響き渡っていた。
夕暮れ、の裏にあるプレハブ造りの女子寮ので、と埃にまみれた作業着姿の女が、数の男たちに向かって何度も何度もをげていた。
熊切勢子だった。
あの華やかだったのカクテルドレスも、首元でり輝いていたの平ネックレスも、真っ赤なも、すべては借の担保として差し押さえられ、跡形もなく消えっていた。夫の広文から叩きつけられた婚届は制に受理され、つでを追いされた勢子に残されたのは、自らが正に着し、贅沢のために使い込んだ数百万円の負債だけだった。
「おい、熊切! 今も万円りねえぞ!」
借取りの男が、煙の煙を勢子の顔面に吹き付けながら鳴りつけた。
「遅れた分は利息に乗せだからな! 来までにを揃えて払えねえなら、もっと割のいい俗へ沈めるぞ!」
「す、すみません……! 来は残業を増やしますから……! どうか、どうかそれだけはご勘弁を……!」
勢子はひび割れ、無数の針の傷がついた両を擦りわせながら、のに両膝をついて許しを請うた。
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かつて、学の教で、同窓会の宴会で、者を踏みにじり、座をして嘲笑っていた女が、今や自らがたいのにいつくばり、銭の返済のために命乞いを繰り返している。
寮の階の窓から、同じで働く若い女たちがややかな線で見ろしていた。
しかし、誰として勢子を助けようと階にりてくる者はいなかった。普段から威張り散らし、自分の落ち度をのせいにして当たり散らす勢子を庇うなど、このにはもしなかったのだ。
男たちがった、勢子はだらけの膝を引きずりながら、ちがった。
袋の隙から覗く指先は、布を縫いわせる針で突かれ、黒ずんだ血豆だらけになっていた。
「ミシンなんて……こんな物のミシンなんて……」
勢子は唇を噛み締め、血の混じった唾を吐き捨てた。
その、脳裏に鮮烈に蘇ったのは、に自らが嘲笑い続けた、あの瑞のろ姿だった。
母子庭で、ツギハギだらけの制を着て、誰にも頼らず、黙々とミシンを踏んで自らのでを切り拓いていった瑞。
そして、夫の暴力と板に寄りかかり、をいたぶることでしか自らの価値を見せなかった自分。
「あの……美代は、あいつのにったのよね……」
勢子のから、乾いた掠れ声が漏れた。
『を陥れてきたあなたのには、もう誰もちません』
瑞の凛とした宣告が、夜のたいに乗っての奥で霊する。
のにち尽くす勢子のには、暗が広がるばかりで、を差し伸べてくれる者は永に現れなかった。