"同窓会でビールを浴びた私に、51人の男が最敬礼" 第12話
の帰郷
駅の雑居ビルをると、の澄み切った青空がどこまでも広がっていた。
駅広のロータリーには、漆黒のセンチュリーとメルセデス・ベンツが数台、然と列をなして待していた。周囲を通する々が、そのただならぬ威圧に巻きにを止めて見守っている。
ビルの玄関先まで付き添ってきた美代が、瑞ので々と腰を折った。
「瑞ちゃん……本当に、何とお礼を言っていいか分からないよ……」
美代の目から、とめどなく涙が溢れしていた。瑞は優しく微笑み、美代の両をそっと包み込んだ。
「お礼なんていらないわ、美代ちゃん。学の、あなたが私のために流してくれた涙を、私は度も忘れたことはなかったもの。……これからは、を向いて自分のをきてね」
「うん……! うん……!」
が言葉を交わしていると、部座席のドアをけた梶原が、瑞に向かってく礼した。
「姐さん、おへどうぞ。ホテルへお送りいたします」
だが、瑞は静かに首を横に振った。
「いいえ、梶原さん。し……歩いていきたいの」
その、央のセンチュリーの部座席のスモークガラスが、音もなく静かにがった。
に座る馬蔵が、窓から妻の凛とした横顔を見つめた。その表には、すべてを理解している男の温かいが宿っていた。
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「ぶりだろう」
蔵のい声が、に乗って瑞のに届いた。
「……母親の顔を、見てこい」
瑞のが、ピタリと止まった。
島紬の帯のにねていた指先が、微かに震える。
、をる朝。母親が夜なべして縫いげてくれたツギハギの制を着て、仏壇にをわせ、「必ず仕送りをするからね」と告げてびしたあの。極の妻となってからも、母に迷惑がかかることを恐れ、送は代理を通じてい、度として直接顔をわせることはなかった。
「……あなた。ありがとうございます」
瑞がくをげると、蔵はさく頷き、窓を閉めさせた。
黒塗りの列が、なエンジン音を響かせながら、静かに駅通りをっていく。
残された瑞の隣に、美代が並んだ。
「瑞ちゃん……こう。おばさんのところへ」
「ええ」
は並んで、昔通った通学の記憶を辿るように歩きした。
駅の代なビルを抜け、線沿いの細い砂利を歩いていく。トタン根の平がち並ぶ古い宅。という歳が流れても、に漂う潮の匂いと、庭先に咲く曼珠華の赤さは、あの頃のままだった。
の突き当たり、に晒されて褪せた造のさな平のに、は辿り着いた。
傾きかけた柱には、錆びた真鍮のさな表札が掲げられていた。
『梅本』
その文字を目にした瞬、瑞の胸の奥から、いものが込みげてきた。
美代がそっと瑞の背にを添えた。
「おばさんね……ずっと、ここで待ってたよ。瑞ちゃんがいつ帰ってきてもいいようにって、毎お掃除して、庭のおにをあげてたの」
瑞は震えるで、製の引き戸の取っに触れた。
すりガラスの向こう側、暗い玄関の奥に、さなの球の灯りが温かく灯っていた。
ガラガラ……と、ぶりの音をてて引き戸をける。
「……ただいま、お母さん」
その澄んだ声が、静かなのに吸い込まれていった。