"同窓会でビールを浴びた私に、51人の男が最敬礼" 第6話
夜の密計と悪魔の罠
ホテルの最階に位置するプレジデンシャル・スイートルーム。
濡れた島紬を脱ぎ、ホテル側が血相を変えて用した清潔なバスローブにを包んだ瑞は、夜景を見ろす窓辺に静かにっていた。
コンコン、と控えめなノックの音が響き、入ってきたのは龍会の最幹部である梶原だった。
「姐さん、お怪はございませんでしたか」
梶原はくをげ、にした温かい本茶の湯呑みをガラステーブルのに置いた。
「丈夫よ、梶原さん。それより……あのには、会には伝えていないでしょうね?」
瑞が振り返ると、梶原は苦渋に満ちた表で線を伏せた。
「……会は現、京の政財界首脳との極秘会談を終えられ、今夜未にこちらのホテルへ到着される予定です。まだご報告は申しげておりません。しかし、もし会がこの件をおりになれば……熊切組など、今夜のうちに板ごと叩き潰されることになります」
「言わないで」瑞は静かに首を横に振った。「私は、あのの名や力を使って同級を脅すような真似はしたくないの。……、で過労で倒れそうになっていた私を拾い、正妻として温かく迎えてくれたあのの顔に、を塗りたくないのよ」
瑞の瞳には、かつて極の世界で修羅をき抜いてきた夫・馬蔵への、い敬とが宿っていた。
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だが、その同じ刻。
郊にある熊切の自宅では、全く別の邪悪な炎が燃えがっていた。
「チクショウ……! の朝、会に破されるかもしれねえ……!」
リビングの畳ので、広文は瓶の酒をコップに注ぎ、息に煽っていた。
「破されたら、俺もおも京の湾岸へ沈められるぞ……!」
怯える夫の横で、頬を赤く腫らした勢子が、暗い目をギラつかせながらちがった。
「ねえ、あんた。さっきあの女、何て言ってた?」
「あ……? 何がだ」
「『般にはをさないで』って、組員たちを止めたじゃない! あの女、本の威を笠に着てるくせに、般には絶対にをせないタマなのよ!」
勢子は唇の端を吊りげ、悪魔のような笑みを浮かべた。
「あの女はカタギの揉め事に組の力を使えない。……だったら、こっちのやり方でハメてやればいいのよ」
勢子は廊の黒話へ駆け寄り、激しい勢いでダイヤルを回し始めた。
「もしもし! 私よ! の昼、駅の丸熊商事の事務所に来なさい! ……美代の件よ! 来ないとあんたたちの借も全部括返済させるからね!」
勢子は取り巻きの同級たちに次々と話をかけると、最に気な哄笑をあげた。
「カタギの私に、ヤクザの姐さんがしできるわけないじゃない! 美代を横領犯に仕てげて、あの女をで事務所へ呼びしてやるわ……!」
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翌朝の午。
瑞が滞する客の黒話が、けたたましく鳴り響いた。
受話器を取ると、勢子の粘つくような嘲笑が鼓膜を打った。
『もしもし、本の姐さん? 美代ちゃんがね、うちの会社の庫からを抜いてたのよ。今、駅のうちの事務所で震えてるわ』
瑞の指先が、受話器をく握りしめた。
『警察に突きされたくなかったら、たったで来なさい。……もし本の組員を歩でも連れてきたら、美代を業務横領でブタ箱に叩き込んで、あんたがヤクザを使ってカタギを脅したってマスコミに全部ぶちまけてやるからね!』
ツーツーという無質な切断音。
瑞は静かに受話器を置くと、昨夜クリーニングから戻ってきたばかりの、もう着の島紬の帯をきつく締め直した。
部をようとした廊の向かいの貴賓では、すでに京から戻った夫・馬蔵が、組員たちを従えて静かに聞を読んでいた。
瑞は夫の部のでを止め、軽く会釈をした。
「……し、同級と会ってきます。誰も、ついてこないでくださいね」
蔵は聞から目をさず、な声でく返した。
「……ああ。気をつけてけ」
夫のその言だけを背に受け、瑞はたったで、罠の待つ雑居ビルへと向かった。