"同窓会でビールを浴びた私に、51人の男が最敬礼" 第4話
の直
「ヤクザ」という言葉が勢子のからびした瞬、それまで面半分に騒いでいた同級たちの顔から斉に血の気が引いた。誰として声をせず、線を泳がせながら、子をろへ引いて距を取ろうとする。
だが、瑞は濡れた島紬の膝に静かにを当てると、何事もなかったかのようにすんなりとちがった。
乱れた髪を直すこともせず、袂から枚の清潔ない晒のハンカチを取りすと、で泣き崩れている美代の元へ歩み寄った。そして、ビールの沫で濡れていた美代の肩を優しく拭い、ハンカチをそのに握らせた。
「み、瑞ちゃん……っちゃダメ! 殺されちゃうよ……!」
美代が涙に濡れた顔をげ、瑞の袖に縋り付いた。だが、瑞は美代ののに自らの温かいをね、穏やかに微笑んだ。
「丈夫よ、美代ちゃん。何も配いらないから。……勢子さん、分かりました。お部へ伺います」
「フン、威勢がいいのは今のうちだけよ!」
勢子は瑞の細い首を鷲掴みにすると、引きずるようにして宴会のい扉を押しけた。瑞は抵抗することなく、自らので歩歩、確かな取りでそのに従った。
宴会の扉をたところで、勢子はち止まり、廊のから恐る恐る覗き見ている同級たちを振り返った。
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「みんな、見てなさいよ! 分でこの女に泣いて座させて、借の保証の判を押させて戻ってくるから!」
勢子の言葉に、好奇と恐怖に駆られた数の男子同級が、距を保ちながらそろそろと廊のをつけてきた。
ホテルのい赤絨毯の廊の最奥。な黒檀の両き扉がちはだかっていた。その扉の向こうからは、く響きのような男たちの歓談と、酒器の触れう音が微かに漏れ聞こえている。
勢子はのドアノブに真っ赤な爪をかけると、ろを振り返って得げに胸を張った。
「みんな、よく見ておきなさい。これが本物の裏社会の頂点よ」
ドォォン!!
勢子は扉を勢いよく蹴りけ、瑞の首を掴んだまま、煙の煙が充満する広へと踏み込んだ。
「あんたぁ! うちの同窓会の女がさ、私に恥をかかせたのよ! 奥で若い衆に——」
勢子の甲い声が、広の異様な景のに、唐突に喉の奥で詰まった。
広な。央に連なる巨な漆塗りの座卓を囲むように、寸分の乱れもない黒のスリーピーススーツをに纏った男たちが然と居並んでいた。その数、ゆうに。壁際には体躯の頑丈な若衆たちが直で控え、部全体には針の本が落ちても聞こえるほどの研ぎ澄まされた緊張が漂っていた。
その座の央に座っていた、髪をオールバックにした鋭いの男——龍会の最幹部であり、直系梶原組の組を務める梶原が、入りの騒音にゆっくりと線を向けた。
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次の瞬、梶原の細い目が、信じられないものを見るように限界まで見かれた。
入につ、からビールを浴びてずぶ濡れになった、染めの島紬を着た女性——瑞の姿を捉えたのだ。
ガタタッ!!
梶原が弾かれたように座布団を蹴ってちがった。その顔は瞬にして気に染まり、額から尋常ではない汗が噴きしている。
「——ッ! 姐さんッッ!!」
梶原の裂帛の気が、広の空気を激震させた。
「お疲れ様ですッッ!!」
ズバババババッ!!
座卓を囲んでいたの極たちが、秒の狂いもなく斉にね起き、直の姿勢を取った。スーツの布擦れの音と、引かれた子の軋む音が鳴のようになる。
そして次の瞬、の屈な男たちが、腰を度にく折り、瑞に向かって斉に最敬礼を捧げた。
「「「姐さん、お疲れ様ですッッ!!」」」
鳴りのような咆哮が、ホテルの壁をビリビリと震わせた。
廊で覗き見ていた同級たちが、その凄まじい威圧に腰を抜かし、壁にしがみついてへたり込んだ。
勢子は目を黒させ、を半きにしたままち尽くした。何が起きたのか脳が処理できず、引きつった笑いを頬に浮かべる。
「や、やだぁ……姐さんだなんて! うちのったら、組員たちに私のことそんなに呼ばせてるの? 気が利くじゃない!」
勢子は廊の同級たちを振り返り、誇らしげに顎を突きした。
「聞いた!? これがうちのの組よ! 私への挨拶よ!」
勢子は再び部の男たちへ向き直ると、座から血相を変えて歩み寄ってくる梶原に向かって、尊に命令をした。
「さあ梶原さん、この継ぎ接ぎ女を奥へ連れてって、度と気なが利けないようにがってやって!」
だが、梶原は勢子の横を、まるで端の汚でも避けるように、無言で素通りした。
「……え?」
勢子の得げな笑みが、凍りついた。
梶原がち止まったのは、勢子の目のではなく、ビールの滴る瑞の正面だった。梶原の鋭いが、瑞の濡れた黒髪と、黒ずんだ島紬を震える瞳で見つめている。
「姐さん……そのお姿は、体……」
く絞りすような梶原の声に、広のの男たちから、凄まじい殺気がちった。