"同窓会でビールを浴びた私に、51人の男が最敬礼" 第3話
逆さの瓶と凍りつく広
「幹事の私に恥をかかせて、タダで済むとってんの!?」
瑞の先数センチまで顔をづけ、勢子は唾をばしながら喚き散らした。その瞳は血り、暴力団組の妻という板によって肥化した自尊が暴していた。
「調子に乗るんじゃないわよ、このド底辺女が!」
勢子のが、テーブルのに置かれていた瓶のビールを鷲掴みにした。
「勢子さん、やめて!!」
隣で美代が鳴をげて割って入ろうとしたが、勢子は腕で美代の肩を乱暴に突きばした。美代はに倒れ込み、鳴をげる。
次の瞬、勢子はビールの王冠が抜かれた瓶を逆さにし、瑞のへと掲げた。
ドボドボドボドボッ!!
え切った黄の液体とい泡が、瑞の黒髪の頂部から容赦なくり注いだ。
会から「キャーッ!」という鳴ががった。しかし、誰として勢子を止めに入ろうとする者はいなかった。関われば、勢子の背にいる暴力団組織に何をされるか分からないという恐怖が、同級全員のをすくませていたのだ。
ビールのたさが、瑞の皮を直撃した。
泡が額を伝い、えられた眉を濡らし、頬から顎へと滴り落ちる。の島紬の衿元から、容赦なく胸元へと染み込んでいく。丹精込めて織りされた絹糸が、たい液体を吸いげ、肩から胸、そして博織の帯にかけて、見る見るうちに黒く濡れそぼっていった。
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しかし、瑞はじろぎつしなかった。
目を閉じることもなく、両を振り回して払うこともなく、唇をきつく結んだまま、氷の彫刻のようにち尽くしていた。ただ、たいビールがまつ毛を濡らすたび、静かに度だけ瞬きをした。
最の滴が落ち切ると、勢子は空になったビール瓶を、ガシャンと甲い音をててテーブルに叩きつけた。
「フン……みっともない。いい気だわ」
勢子はさらに嘲笑をめると、濡れそぼった瑞の髪をで無慈に鷲掴みにし、力任せに方へと引きずりろした。
「ほら、座しなさいよ!」
引な力に引きずられ、瑞の膝が、ビールでたまりのようになった絨毯のへと落ちた。ズシン、と骨がに当たる鈍い音が響く。
「あははは! そうよ、あんたはそうやって、私のでいつくばってきてりゃいいのよ!」
勢子は周囲の同級たちを見回し、狂ったように笑い声をげた。
「学の、放課のトイレのでもこうやっていつくばってたわよねえ! あのは美代が先を呼びにって助けてくれたけど、過ぎた今、誰もあんたなんか助けてくれないのよ! 世のはね、と力を持ってるが支配してんの!」
だが、に片膝をつかされた瑞は、決してうつむいてはいなかった。
掴まれた髪の隙から、瑞の澄み切った瞳が、まっすぐに勢子の瞳を捉えていた。
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その線には、屈辱も、恐怖も、絶望すらもなかった。ただ、目ので喚き散らすれな狂を、底れぬ静寂ので見据える、絶対零度のだけがあった。
「……何よ、その目は」
勢子の背筋を、たい汗が伝った。殴りつけ、ビールを浴びせ、髪を引っ張り回しているのは自分であるはずなのに、なぜか自分が酷な刃を喉元に突きつけられているような、息の詰まる恐怖を覚えた。
勢子はその気な覚を振り払うように舌打ちし、瑞の髪を乱暴に突き放した。
「フン……奥の特別宴会、今夜はうちの組の貸し切りなのよ」
勢子は胸元の太いの平ネックレスを指先で弾き、会の全員に響き渡る声でらかに言い放った。
「うちの、広域暴力団・龍会系熊切組の組なのよ。……ちょっと来なさい、継ぎ接ぎ。奥の部に連れてって、うちの若い衆にたっぷりがってもらおうじゃないの。の程を弁えさせてあげるわ」
宴会の空気が、完全に凍結した。