"現地払いの還暦旅行" 第6話
予約者と支払者
京へ戻る列ので、俺は文太から送られてきた予約確認を読み返した。そこには宿泊代表者として義父の名が記され、支払い方法の欄には現精算とある。俺が申し込んだのは部泊の宿泊プランで、支払いを保証する契約を結んだわけではない。ホテル側が当、実際に利用すると精算責任を確認する順になっていた。
文太は俺が友だからといって、客の個報を好きに教えられるではない。「予約者として変更のを確認する必がある」と言い、増員の扱いを説してくれた。優希が夫婦用の部に別の宿泊者を入れたいと申したらしい。俺は、自分の宿泊分を取り消し、代わりのが入るならホテルの規定に従って本確認と追加料の説をしてほしいと伝えた。
「そのが誰なのかは、俺に教えなくていい」と言った。
「……分かった。おがそう言うなら、続きだけきちんとする。ただし、これからの追加注文まで俺が止めることはできないぞ」
「止めなくていい。俺はもう旅の参加者じゃない」
にして初めて、そうなのだとった。俺は旅程を作り、切符を取り、ページのしおりまで用したのに、ホテルへ向かうには乗っていない。旅会社の社員としては客を目へ届けることが仕事だが、婿としての役目は、いつのにか荷物運びと支払いだけになっていた。
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帰宅する、俺は実の母へ話をかけようとしてやめた。母は優希のことを気に入っていて、結婚記には毎ささやかな贈り物を送ってくれる。今の話をすれば、母まで傷つけてしまうだろう。事実がはっきりするまでは、親戚や職に妻のことを広めないと決めた。りのまま方を増やせば、で取り返しのつかないことになる。
自宅に戻ると、優希が発に使った化粧台がそのままだった。しいの箱が置かれ、引きしには旅先で着るはずのワンピースのタグが残っていた。俺はそれを片づけず、蔵庫から麦茶をして子に座った。妻のが寂しいというより、いつから同じで別の予定をてていたのか分からないことが苦しかった。
夕方、義母からグループに写真が届いた。ホテルのロビーで撮ったもので、はを背に笑っている。次の写真には、義父が赤いちゃんちゃんこを着ていた。駅で「そんなダサいものは着ない」と言っていたはずなのに、本は満更でもなさそうな顔をしている。
俺はその姿を見て、しだけ救われた。還暦祝いの準備をしたこと自体は、違いではなかったのだ。誰かをばせたいとった気持ちまで否定する必はない。けれど、だからといって、自分を侮辱したの請求を無条件で引き受ける理由にもならない。
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そのの夕、文太からい連絡が入った。「代表者の署名と支払い方法の確認は済んだ。追加利用についても、現の代表者に案内している」。ホテルの規定を守っただけの報告だった。俺は礼を返し、スマホを伏せた。
しして、族のグループに美奈子がき込んだ。「シャンパン、部につけてもらった! 弘志さん、太っ腹だね」。義母が「はエステもお願いしちゃおう」と続ける。誰も精算欄の話をしていない。俺は返信欄に指を置いたが、いったん消した。
今さら慌てて説教しても、あのは俺がを惜しんでいるとうだけだろう。必な案内はすでに送ってあるし、義父はホテルでも説を受けた。俺が今すべきことは、りに任せて族のグループを荒らすことではない。優希から届いた、取り消された通のメッセージをどう扱うか、落ち着いて考えることだった。