"現地払いの還暦旅行" 第3話
妻が伏せた画面
旅の週、夕をべていると優希のスマホが鳴った。彼女は箸を置き、画面を見た瞬に端末を裏返した。俺が「仕事の連絡?」と聞くと、優希はしを置いて「友達」と答えた。以は通が来るたびに何の話か教えてくれただったから、その変化が妙に気になった。
「最、その友達とよく話してるね。旅のこと?」
「そう。旅好きなだから、おすすめを聞いてるの」
「ホテルなら俺のほうが詳しいとうけど」
「何でも仕事の話にしないでよ。たまには私の友達の見も聞きたいの」
言い方がかった。俺はそれ以聞かなかったが、優希が呂に入るときまでスマホを持ち歩くようになったことには気づいていた。で過ごす夜の会話はくなり、休も「用事がある」とでかけるが増えている。
以、俺は同棲していた恋に浮気をされたことがある。結婚の話だ。文太はその事をっていて、俺がを疑うことを極端に嫌うのも分かっている。だからこそ、疑いだけで妻を問い詰めたくはなかった。
結婚したばかりのころ、優希は俺が作る簡単な休の予定表を面がっていた。図の端にさな喫茶をき込み、「こういうの、私だけのガイドブックみたい」と笑ってくれた。いつから、それが細かいと言われるようになったのだろう。
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俺にも仕事を理由に予定を詰め込みすぎたところはあった。だから今回は、自由をめに取り、きたい所を選べるようにしていた。だが、優希はそのページさえこうとしなかった。
旅の配はんだ。義父母と美奈子と優希には幹線のグリーンを席取り、俺は同じ列の普通を予約した。で緒にきたいからと提案したが、美奈子が「弘志さんは荷物を見るんでしょ」と言い、義父もそれでいいと決めたのだ。
「普通だと荷物を運ぶときれますよ」と伝えると、美奈子は「じゃあ駅に着くまでデッキにいて」と答えた。俺は旅会社の仕事で数の団体を案内したこともあるが、客の荷物をでつ見張り続ける旅程など組んだことがない。
それでも今回の旅を引き受けたのには理由があった。義父は若いころ、優希が入院したときに計を支えるため昼夜働いただと聞いている。俺が結婚の挨拶にったも、無ながら「娘をよろしく頼む」とをげてくれた。そのの還暦くらい、気持ちよく祝いたかった。
発の、優希は珍しく嫌がよかった。俺が仕事から帰ると、居でしいワンピースを鏡に当てていた。「旅用?」と尋ねると、「そう。目に着るの」と笑った。ところが「緒に写真を撮ろう」
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と言った途端、彼女は曖昧な返事をして鏡へ向き直った。
「目はお姉ちゃんのりいも来るんだよね」
「うん。健さんっていう役所の。お姉ちゃんが婚活でりったんだって」
「じゃあ族だけの旅じゃなくなるね」
「別にいいじゃない。みんなで楽しくすれば」
優希の言う「みんな」のに俺が入っているのか、急に分からなくなった。夜、寝に戻ると、妻はベランダで誰かに声で話をしていた。俺の音に気づくと「当ね。楽しみにしてる」とだけ言って切った。
「誰?」と聞くに、優希は「友達」と答えた。俺は何も言わず洗面所へ向かった。鏡に映る自分の顔は、旅の配を終えたのものには見えなかった。しおりの最にある精算欄だけでなく、俺はもうつ、確かめるべきことを見落としている気がしていた。