"現地払いの還暦旅行" 第1話
還暦祝いの請求
「お、旅会社に勤めているんだろう。だったら配くらいできるよな」
曜の昼、義父の森義は、俺たち夫婦の卓に座るなりそう言った。義母の由美子と義姉の美奈子まで緒だった。誰も来るとは聞いていない。妻の優希だけは驚きもせず、蔵庫から数分のみ物を取りしていた。
「来、俺が還暦を迎える。泊で温泉旅にくことにした。宿はの見える流ホテルだ。もちろん、おが払うんだぞ」
俺は湯みを置いた。旅会社の企画担当をしているから、旅程を組むこと自体は難しくない。けれど、分の級旅を突然贈れと言われれば、話は別だった。しかも義父は、相談ではなく決定事項として話している。
「お祝いはしたいとっています。ただ、予算の限だけ先に決めませんか。宿泊費と事代で相当変わりますから」
「限? おの財布が限だろう」と義父が笑った。義母は当然のようにうなずき、美奈子はスマホでホテルの写真を見せてくる。そこには、呂付きの広い客と、を望むテラスが映っていた。
「スイート以は嫌。あとエステね。シャンパンもちゃんとした銘柄を頼んで。還暦祝いなんだから、ケチくさいこと言わないでよ」
「美奈子さん、エステは追加料になります。希望だけでも覧にしてもらえますか」
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「細かいわね。義弟が族のために働くんだから、栄にえばいいじゃない」
義母は、娘を嫁にもらったのだからいものだと言い添えた。まるで結婚したとき、俺が何かの代を払い損ねたかのようなぶりだった。俺は歳、優希は歳。結婚してになるが、こういう席ではいつも俺だけが族の側に置かれる。
「優希はどうう?」
「お父さんの還暦だし、いいんじゃない。弘志、仕事で旅館をってるでしょ」
妻は画面から目をさなかった。さっきからい通が何度も届き、そのたびにスマホを伏せている。族ので論する気はなかったが、俺はせめて条件をはっきりさせようとった。
「宿は俺が探します。ただし、何にいくらかかるか分かるように、旅程表と精算方法を面で共します。予約の追加注文は、その都度ホテルで確認してください」
「そんなもの、旅なら勝にやれ」と義父は言った。「それよりおも来い。荷物持ちが必だからな」
「俺も、ですか」
「分の荷物を運べるだろう。写真も撮れ。主役に雑用をさせるわけにはいかん」
俺は苦笑いして返事をみ込んだ。義父は自分の言葉を冗談だとっているのかもしれない。しかし、妻が俺を見ずに「よかったね、みんなでける」と言ったとき、その冗談を止めるがもいないことだけは分かった。
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が帰ったあと、テーブルにはホテルの写真を印刷しただけが残った。優希はそのを回収しながら、「絶対に側の部にしてね」と言った。俺は仕事用の帳をき、まずだけいた。支払いの責任者は、誰なのか。
俺は度、義父に結婚祝いをもらったのことをいした。封筒には万円が入っていて、義父は「娘に苦労をさせるな」とだけ言った。その額を満にったことはないし、返礼を期待したこともない。ただ、祝いというものは、相が気持ちを込めて渡すものだとっていた。受け取る側が品目も額も指定し、断ることさえ許さないなら、それは贈り物ではなく請求になる。今回こそ、曖昧にしないでおこうと決めた。
その答えを決めないまま予約を入れたら、旅は最初から揉める。だが、この点ではまだ、俺が用したそのに義父自が署名することになるとはっていなかった。