"「25万円振り込め」と脅す夫へ、私はもう妻じゃない" 第5話
の婚届
浩司が婚届を私に渡したのは、会社を辞めたばかりの頃だった。
富の提案でで温泉旅館へき、豪華な夕を囲んでいた夜のことだ。
旅費はすべて私のボーナスからていた。
浩司は本酒をみながら枚のを差しした。
「俺はこれからでかいことをやる」
得げな顔だった。
「もし失敗して借だらけになっても、おには迷惑をかけない。そのはこれで婚してやるよ」
を見ると、婚届だった。
夫の欄には浩司の署名。
富は隣で、
「まあ、本当に族いの優しい子ね」
とを叩いていた。
私は何も言わず、そのを受け取った。
浩司は私が泣くとっていたらしい。
けれど私は泣かなかった。
そのの夜、眠れずに廊へた、富が話している声を偶然聞いた。
「浩司が社になったら、あのを使えばいいのよ」
私はを止めた。
「あの嫁はとしか取り柄がないんだから。担保にするなり売るなりすれば、事業なんていくらでも広げられるでしょう」
笑う声。
「あの女の父親が建てた古臭いなんて、いずれ壊してしくすればいいのよ」
すりを握る私の指がくなった。
婚届は、私を守るためではない。
「いつでも婚できるぞ」と脅して、私を従わせるためのだった。
私はそのでを問い詰めなかった。
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婚届も捨てなかった。
透なファイルに入れ、保管した。
浩司が本当に働き始めたら。
夫婦としてやり直せるが来たら。
そのは何もせず処分するつもりだった。
だが、浩司は働くどころか、私ので別の女にブランド品を買い、富と緒に父のまで狙っていた。
もう婚姻関係を続ける理由はなかった。
今回の張、私は仕事だけをしていたわけではない。
現確認が終わったの程を使い、弁護士や、役所へを運んでいた。
カードの契約。
座の管理。
自宅の防犯。
仕事データのパスワード。
すべてをつずつ理した。
そして昨の朝。
私は婚届を持って役所へ向かった。
もちろん、に作成された類だからこそ、事に林先へ事を説していた。
先は言った。
「受理されたに、浩司さんが当や現のについて争う能性までゼロとは言えません。だから、美穂さん自が現婚を望んでいることと、これまでの経緯をきちんと記録しておきましょう」
それでも私は迷わなかった。
窓で番号を呼ばれ、を提する。
はし震えていた。
けれど、戻りたいとは度もわなかった。
続きが終わり、婚届受理証を受け取った、目の奥がくなった。
しいからではない。
ようやく終わったのだとった。
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誰かの嫌を取らなければ自分のにめない活が。
夫から「婚するぞ」と言われるたび、黙って耐える活が。
ホテルへ戻った私は、浩司が持つ追加カードの利用を止めた。
活費座へ25万円を入れることもしなかった。
そして翌朝。
予どおり浩司から話がかかってきた。
「おい! カードが使えないぞ!」
背から、
「まだ帰れないの? すごく恥ずかしいんだけど」
という女の声が聞こえた。
「最カードの正利用がいから、止まったのかもしれないわね」
私は静かに答えた。
「帰ってから確認するわ」
「帰ってからじゃ遅い! 今すぐ何とかしろ!」
「ごめんなさい。これから仕事なの」
通話を切った。
その数分、自宅の固定話から富の着信が入った。
私はなかった。
留守番話へ切り替える。
《美穂さん! あんた、どういうつもりなの!》
鳴り声の向こうで、玄関のインターホンが鳴った。
同に、防犯カメラの通がスマホへ届く。
画面にはスーツ姿の男性。
私がの現状を把握するため、観査定を依頼した産会社の担当者だった。
玄関をけた富が説を聞き、顔を変えた。
「ここは息子のよ! 勝に売れるわけないでしょう!」
担当者が落ち着いて答える。
「所者の森田美穂様からのご依頼です」
画面ので、富の表が凍りついた。
私はホテルの机に置かれた婚届受理証をに取った。
はまだらない。
自分たちが私を追いす相談をしていた昨。
私はすでに、夫婦でいることそのものを終わらせていた。