"本当の家主" 第9話
ネカフェ難民となった元夫の醜い責任転嫁と共倒れ
を叩きされてから週。
誠たちのき着いた先は、歓楽の雑居ビルのにある、暗いインターネットカフェの狭ブースだった。
貯など円も持っていなかった誠にとって、敷・礼や保証会社の審査が必な賃貸アパートを借りるなどのまただった。消費者融のキャッシング枠もすでに限度額まで使い切っており、元に残されたのはわずかな端だけ。が横並びの狭い個にを寄せい、壁越しに互いのいびきと愚痴を聞きながら眠る活が続いていた。
「痛い……背が痛くてたまらないよ……」
いリクライニングシートので、かよが腰を押さえながら呻いていた。
「なんで私がこんな穴蔵みたいなところで寝起きしなきゃいけないんだい。あそこは私の終の棲だったのに……! 全部あの気なのり子のせいだ! あの悪魔のような女が、私からを奪ったんだ!」
「うるさいな、母さん! 静かにしろよ、員に注されるだろ!」
隣のブースから、目のに濃い隈を作った誠が鳴り返した。
誠の着ているワイシャツは数着たきりで黄ばみ、襟元からは饐えた汗の臭いが漂っていた。会社には「庭の事」と嘘をついて欠勤を続けていたが、すでに休暇は底をつき、事部から『社しなければ無断欠勤として懲戒処分を検討する』という徹なメールが届いていた。
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しかし、今の誠にはアイロンのかかったスーツも、社するための交通費すら事欠く状態だった。
「お兄ちゃん、お腹空いたよ……」
反対側のブースから、髪をボサボサにした美が顔をした。スウェットの膝は抜け、爪のには垢が溜まっている。
「コンビニのおにぎり、もう飽きた。ファミレスでちゃんとしたハンバーグべたい。おちょうだいよ」
「なんかあるわけねえだろ!」
誠がちがり、ブースのい仕切りを蹴ばした。ドン、と鈍い音が響き、周囲の利用客から壁を叩く威嚇の音が返ってくる。
「おが昼から友達呼んでピザい散らかして、のり子を追いさなきゃこんなことにならなかったんだ! 全部おのがままのせいだろうが!」
「何よ! お兄ちゃんだって『嫁の分際で気だ』って言ってカーテン閉め切ったじゃない! お兄ちゃんがちゃんとお義姉さんを繋ぎ止めておかないから、を売られちゃったんでしょ! 先ばかりのエリート気取りの無能!」
「無能だと!? 誰ので今まで飯ってきたとってんだ、この寄虫が!」
狭い通で、代の兄と妹が胸ぐらを掴みって罵倒しう。
「やめなさい! ともやめなさいよ!」
かよがちがろうとして、をもつれさせて通に転がった。
「そうだ……親戚の夫さんに、もう度頼み込むんだよ! 座して泣きつけば、しはおを貸してくれるはずだわ!」
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かよが震えるでスマートフォンを取りそうとしたが、画面は真っ暗なままだった。数に利用料の未払いで回線が止されていたのだ。
「もう誰も助けてくれないよ……」
誠がそのにへたり込み、両で顔を覆った。
自分が妻を支配しているとっていた。妻の資産のに胡座をかき、自分は何つ責任を負わず、偉そうにふんぞり返っていれば、すべてがい通りに回るとい込んでいたのだ。
だが現実は、自分には何の力も、何の信用もなかった。妻という台を失った瞬、自分たちはただの活者へと転落したのだ。
その、ネットカフェのフロントから員がに歩み寄ってきた。
「お客様、のお客様のご迷惑になりますので、今すぐお会計を済ませてご退ください。これ以騒がれるなら、警察を呼びます」
酷な通告。
はわずかな荷物を抱え、ネオンが毒々しくる夜のへと、再び追いされていった。たいが吹き抜ける駅のロータリーで、互いに責任をなすりつけいながら、彼らはくあてもなく彷徨い続けるしかなかった。