"同窓会で頭取の娘に脅された俺、300億を全額解約" 第18話
奥川支の窓につ元令嬢
季節はを通り越し、初のたい枯らしが吹き抜ける。 県部の部に位置する、王奥川支。 周囲を急峻な々に囲まれ、最寄りの駅からバスで以かかるそのさな支の窓に、の女性員がっていた。
髪をな黒ゴムで束ね、すっぴんにい顔に、標準支の事務を纏った久エリだった。 かつてにつけていたカルティエのブレスレットも、派なネイルも、そこにはない。 元の端末を操作する指先は、たい隙のせいで赤くあかぎれができていた。
「次の方、どうぞ」 エリが声をかけると、腰の曲がった老婆が、のついた靴を引きずりながら窓へやってきた。 には、シワだらけの帳と、千円札が数枚。 「すまんねえ、お姉さん。から、千円だけろしたいんじゃが、暗証番号をど忘れしてしまってのう……」
以のエリであれば、「ろが詰まってますからくしてください」「暗証番号も覚えてないんですか」と骨に嫌悪を顔にしていただろう。 だが、今の彼女は違っていた。 「おばあちゃん、丈夫ですよ。ゆっくりいしてください。分証をお持ちですか? ご本様確認ができれば、お続きできますからね」 エリは自らちがり、老婆の元で優しく語りかけ、老鏡の位置を直してやった。
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「ありがとうねえ……親切なお姉さんだ。これ、畑で採れたみかんじゃが、持っていきなさい」 老婆から渡された、しのついたさなみかん個。 カウンター越しにそれを受け取った瞬、エリの目から、ツッと筋の涙がこぼれ落ちた。
(私……今まで、何を見てきてきたんだろう……) 取の娘という板を剥ぎ取られ、この過疎の支へばされてからヶ。 朝の始発バスに揺られ、ストーブの灯油を入れ、毎何ものお寄りの銭を数え、通帳を繰り越す々。 そこにあるのは、「パパに頼む」という魔法が切通用しない、臭く、で、だが嘘偽りのないの暮らしそのものだった。
「久さん、お疲れ様」 夕方、シャッターがりた執務で、厳格でられる支が声をかけてきた。 かつて父親の久孝夫が最も信頼していた、叩きげのベテランバンカーだ。 「最、窓でのお客さんの評判が良いぞ。『親になって話を聞いてくれる』と、農協の組も褒めておられた」
「……ありがとうございます、支」 エリはくをげた。 その瞳に、かつての傲なは微もなかった。 自分が同窓会で「税で本を並べてるだけ」となじった砂子の仕事も、名もなき々が誇りを持ってこなすな労働も、すべてはこの円、円のみのに成りっているのだと、彼女は今、をもって学んでいた。
その夜、エリは支の独寮のえ切った自で、机に向かって便箋を広げた。 宛先は――アサギホールディングス、堀弘様。 言い訳も、復縁の願も、保の言葉も切ない。 ただ、自らの無と傲をから恥じ、窓で会ったお寄りの笑顔を通じてった「働くことの本当の」を綴った、枚の静かなだった。 ペンをらせるエリの横顔には、遅すぎたかもしれないが、自らのでを踏みしめてきようとする、しいのが微かに宿っていた。