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"同窓会で頭取の娘に脅された俺、300億を全額解約" 第16話

たったつのメッセージと、港堂の簾

砂子からのメッセージは、たったのだった。

『ひろ君、ちゃんと眠れてる? お仕事、無理しすぎてないといいけれど』

経済誌のニュースにも、千億円という数字にも、百億円の解約劇にも、言も触れていなかった。 彼女が配していたのは、アサギホールディングスの代表取締役ではなく、ただ、過密なプレッシャーので戦い続けている「堀弘」というの体だけだった。 同窓会の夜、ホテルの玄関先で『って無理してない?』と尋ねてくれた、あのと寸分違わぬ温度。

俺は自宅の斎で、わず声をして笑った。 世界が数字と肩きで俺を取り囲もうとするで、ただ、俺の魂のありかを見つめ続けてくれるがいる。 その奇跡のような温もりに、目がくなった。

俺はすぐに返信を打った。 『眠れてるよ。……、元にく用事があるんだが、夜、駅の「港堂」にかないか』 数秒、すぐに既読がつき、返信が届いた。 『うん! 仕事が終わってからでよければ、ぜひきたいな』

翌、の曜、午。 夕暮れの潮が吹き抜ける元駅の裏通り。 赤提灯がに揺れる衆堂『港堂』の簾を、俺はぶりにくぐった。 代、夕方の弁当の皿洗いを終え、夜からの倉庫仕分けに入るのわずかな、なけなしの百円を握りしめて、豆腐の噌汁とから持参した握り飯をかじっていた、いのだ。

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代替わりはしていたが、煤けた内の佇まいも、壁に貼られたきの冊メニューも昔のままだった。 奥のさな掛けのがりに、砂子はすでに座っていた。 飾らない成りのサマーセーターに、ベージュのスカート。膝のには、図館の本が冊入った帆布のトートバッグが置かれている。

「社さんが、こんな庶民なおでいいの?」 俺が向かいに腰をろすと、砂子は悪戯っぽく微笑んだ。 「ここがいいんだよ。……記事、読んだのか?」 「うん。職の同僚が教えてくれたの。『これ、田さんの同級じゃない?』って」 「そう答えた?」 「『らない』って答えたよ」砂子は温かいほうじ茶の湯呑みを両で包み、穏やかに言った。 「だって、私が見てきたひろ君は、売がどうとか、社員が何千とか、そんなじゃないもの。……同窓会の夜にそんなこと聞いてたら、私、緊張してに話せなくなっちゃってたよ」

「そうかな」 「そうだよ。百億をかす社と、百円の噌汁の話なんてできないじゃない」 砂子がクスクスと笑い、俺もつられて吹きした。 肩から、全から、い鎧がガラガラと崩れ落ちていくような解放。 こので、このと向かいっているだけ、俺は「アサギの堀」ではなく、ただの「ひろ」に戻ることができたのだ。

運ばれてきた名物の肉豆腐と、アジフライ、そしてい噌汁。

「いただきます」とをわせ、素朴な料理をに運ぶ。 臓腑に染み渡る、飾り気のない本物の旨。 「美しいね」と微笑みうのに、虚飾や見栄が入り込む隙など、ミリたりともしなかった。

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