みかん小説
本棚

"同窓会で頭取の娘に脅された俺、300億を全額解約" 第12話

砕け散った誇りと、娘の絶望

「う……そ……」 エリの喉から、掠れた鳴が漏れた。 青ざめていた顔は、もはやを通り越して気に変し、瞳は焦点を失って宙を彷徨っている。

「私の……パパが……ひろの……?」 「そうだ、久さん」 俺はを交えぬ、氷のように澄んだ声で告げた。 「あなたの父親は、担保のない若造の覚悟を信じ、の尊厳を救うためにペンを執った派な員だった。……だが、娘であるあなたは同窓会の席で何をした? その父親が築きげた信用を酒の肴にし、の殺与奪の権を弄び、名刺の裏に『げに来い』とき殴ったんだ」

「あ、あああ……っ!」 エリは両で顔を覆い、子から滑り落ちるようにしてにへたり込んだ。 そのに散らばった名刺の写し。 『げに来るは、パパに通しとく♡』 自らの軽な文字が、父親の半世紀に及ぶバンカーの誇りを、自らのでに叩き落としたかぬ証拠として、網膜を焼き尽くしていた。

「パパ……! ごめんなさい、ごめんなさい……! 私、そんなことらなくて……! らなかったのぉぉっ!」 泣き叫び、父親のズボンの裾に縋り付くエリ。 だが、久取はそのを、無にも払い落とした。 その差しには、娘を甘やかし続けてきた自らの過への激しい悔と、決して許すことのできない断罪のだけが宿っていた。

「らなかったで済む話かッ!!」

広告

取の号が、役員応接の防音ガラスを震わせた。 に転がったエリが、ビクッと全をねがらせる。

「おが同窓会で振りかざしたものは何だ! 取の娘という虚飾の板だ! 員としての識でも、自らの営業実績でもない、ただの褌で相撲を取り、真面目に汗流して働くを見したのだ! ……堀社の仰る通りだ。私が教えてきたはずの『信用』という言葉を、おは最も汚らわしい形で裏切ったんだぞ!」

久取は激しく肩をさせ、胸を押さえた。主治医から止められていた発作の予兆が、再び胸元を襲っているようだった。 古川部が慌てて駆け寄り、取の背を支える。 「取、どうかご無理を……!」

「古川、しなさい……!」 取は痛みに顔を歪めながらも、自らのでしっかりとちがった。 そして、にいつくばって泣きじゃくる娘を見ろし、言言、自らの臓を削り取るような声で、酷なる処分を宣告した。

「久エリ。……おを本付で経営企画部調査役から解任し、総務部付とする。そして今週末の事委員会を経て、正式な懲戒処分をす」 「パ……パパ……!?」

「度と、私をパパと呼ぶな。……おのような恥らずの娘は、がにはおらん」 それは、にわたり「パパに頼めば何でも叶う」と信じ込んできてきた令嬢の、の台が完全に崩壊した瞬だった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: