"同窓会で頭取の娘に脅された俺、300億を全額解約" 第1話
ぶりの円卓と赤いワンピース
真の気がアスファルトに澱むの夕暮れ。方都の駅にそびえつグランドホテルの階宴会『翔の』には、を聾するほどのざわめきが渦巻いていた。井の巨なシャンデリアからり注ぐなの、いテーブルクロスが張られた円卓が卓、然と並んでいる。 県の卒業百が集う、卒業から目の同窓会だった。
「ひろ! 本当に来てくれたんだな!」 受付の机で、幹事を務める松本が恰幅の良くなった体を揺らして破顔した。代に徒会を務めていた男だ。松本の元には、席者全員の名札が並んでいた。名のにはご丁寧に『職業欄』が設けられている。で誰がどんな位に就いたかを目で分からせようという、松本なりの趣向だった。 俺――堀弘(ほりぐち・ひろき・歳)は、備え付けの油性ボールペンをに取り、迷うことなく『会社経営』とだけ記した。会社の規模も、商も、役職もかなかった。量販で買った万千円の吊るしの紺スーツに、飾り気のない無のネクタイ。誰が見ても、方で細々とトラック数台を回している零細企業の冴えないオヤジにしか見えなかったはずだ。
「経営か、運送とか倉庫とか言ってたもんな。
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おらしくていいよ」 松本はく詮索することもなく納得し、会の最奥――台から最もい、入りのたいが吹き込む第卓の名札を指差した。 会を見渡すと、台の真ん、最も華やかな座の円卓で、際甲い笑い声を響かせている女がいた。 久エリ(くが・えり)。 く胸元のいた真のノースリーブワンピースにを包み、首にはカルティエのゴールドブレスレット、にしたクロコダイルの名刺入れから、取り巻きたちに次々とい名刺を配り歩いている。
「うちのパパ、いま王(とうおう)の取なの。融資とか利で困ったことがあったら何でも言ってね? パパに本話入れといてあげるから!」 名刺を受け取った同級たちが、揉みをしながら「さすが取令嬢!」「頼もしいなあ」とおべっかを使っている。 王といえば、この県で最のシェアを誇る第方であり、元経済の殺与奪の権を握る絶対な融ピラミッドの頂点だ。エリの父親である久孝夫(くが・たかお)は、に取の座に就いた実力者だった。 エリ自も父親のコネで王に入し、現は本経営企画部の調査役という肩きを振りかざして、まるで自分がを支配しているかのように振るっていた。
ふいに、名刺を配り終えたエリの線が、奥の末席に座る俺の胸元の名札へと滑った。
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エリの細くえられた眉が、侮蔑と嘲弄のを帯びて吊りがる。 「……あれえ? ひろじゃん! うっそ、まだきてたんだ? も音信通だったから、てっきりどこかで野垂れんだのかとってた!」 カツカツと障りなハイヒールの音を響かせ、エリが俺の円卓へと歩み寄ってきた。そのろには、代からの腰巾着である産業の岡崎と、取り巻きの女たちがぞろぞろと従いている。 「名札見たよ。『会社経営』だって? あの貧乏だったひろが社さん? ねえ、社員何なの? くらい?」 エリがの指を本広げてヒラヒラと振ると、周囲の取り巻きたちからドッと卑た失笑が漏れた。
俺はグラスに注がれたぬるいビールに線を落としたまま、を交えずに静かに答えた。 「……もうしいるよ」 「へえー! じゃあ? すごいじゃん、町のオヤジさん!」 エリは信じる気など爪の先ほどもない声で言い放ち、俺の着ている量販のスーツのっぽい毛芯を指先で弾いた。 「まあ、倒産してうちのパパのに差し押さえられないように、せいぜい爪にを点して頑張りなさいよ」 背を向け、悠然とっていく赤いワンピースの背を、俺は徹な差しで見送った。 俺の胸の内には、りすら湧かなかった。ただ、底れぬ「え」が、静かに澱のように沈殿していくだけだった。