"本当の家主" 第7話
夫からの傲な話と「は売ったよ」の刑宣告
午半、の応接ブースにて決済続きが完した。
買取代から宅ローンの残債が括相殺され、抵当権抹消類が司法士に渡される。残った数百万円がのり子の個座に着したことを告げる通帳の印字を見つめながら、のり子はさく息を吐いた。
「様、これにて所権は完全に弊社へ移転いたしました。あちらの物件は、法に弊社が管理する私となります」
が礼し、執チームとの連絡を取り始めた。
のり子はオフィスをて、の差しがり注ぐ並を歩いた。正午をらせるのチャイムが鳴り響いたのとほぼ同に、バッグのでスマートフォンがけたたましいバイブレーションを始めた。
画面には『誠』の文字。
のり子は歩の脇にち止まり、ゆっくりと通話ボタンをスライドさせた。
「もしもし」
『おい! やっとたか! 今まで何やってたんだ!』
受話器の向こうから、鼓膜を破らんばかりの声が響き渡った。荒い息と、器がぶつかるような苛った物音が混ざっている。
『お、自分が何をやったか分かってんのか!? 丸を空けて、飯も作らず掃除も放りして! 母さんも美も腹を空かせて倒れそうなんだぞ! のはゴミだらけだ!』
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「あら、そうなの」
のり子の淡すぎる返答に、誠が瞬言葉を詰まらせた。
『あ、あんだと……? 何き直ってんだ! いいか、俺はの黒柱だぞ! 夫の顔にを塗りやがって! おい、のり子、しは反省したのか!?』
「反省?」
のり子は空を見げ、くたい笑みを浮かべた。
「ええ、く反省したわ」
『ふん、やっと分かったか!』誠の声に、品な勝ち誇った響きが戻った。『分かったならさ、今すぐタクシーで帰ってこい。途で特の寿司でも買って、母さんと美に座して詫びを入れろ。そうすれば、婚まではしてやらないでおいてやるからな!』
話の奥から、美の甲い声が割り込んできた。
『お兄ちゃん! 私の汚れたも全部クリーニングさせなさいよ! 部の掃除も今すぐやらせて!』
さらに義母のかよの嗄れた声もなる。
『当たりだよ! 男の嫁が反省するのは当然なんだからね!』
ゴミと悪臭にまみれたリビングで、なおも自分たちが世界のにいると信じ切っているれな寄虫たち。
のり子は静かに息を吸い、氷柱のように徹な言葉を放った。
「私が反省したと言ったのはね、あなたたちみたいな寄虫を、私のにまわせてしまったことよ。私のの完全な汚点だったわ」
『は……? お、何を言って——』
「それから、もう戻るなんてないわよ」
『あんだと!?』
「なら、さっき売ったから」
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通話の向こう側が、完全に静まり返った。呼吸の音すら途絶え、数秒の空が流れる。
『……お、冗談もいい加減にしろよ。を売った? そんな嘘で俺を脅せるとってんのか?』
「嘘だとうなら、法務局へって登記簿を見てくればいいわ。に未来産への売却続きも、残債の精算も、所権移転の登記申請もすべて完したの。あのも建物も、もう私の持ち物でも、あなたのでもない。産会社の私よ」
『う、嘘だろ……!? そんなの、俺の同がないとできるわけがない! 夫婦のだぞ!』
誠の声が激しくずり、狼狽のが隠せなくなっていく。
「言ったはずよ。あのは私の両親の遺産からをし、私の単独名義でローンを組んだ、私の特財産だと。法律、配偶者であるあなたの同なんて、爪の先ほども必ないのよ」
『の、のり子……! 嘘だと言ってくれ! お、本気で……』
「本気よ。現状姿で引き渡したから、あなたたちが散らかしたピザの箱も、汚れた器も、あなたたち自も、全部ひっくるめて業者に引き取ってもらう契約にしたわ」
その瞬だった。
通話の奥から、激しく属扉を叩くい音と、連打されるインターホンの警告音が割れ鐘のように響き渡った。
ドンドンドン! ピンポンピンポンピンポン!
『ひっ……! お兄ちゃん、何これ!? 玄関のに、スーツ着た男のたちが何もってるんだけど!』
美の鳴が受話器を突き破るように響いた。
『ちょっと誠! く追い払いなさいよ! 「直ちに退しろ」って鳴られてるわよ!』
「あら、もう着いたみたいね」
のり子は穏やかな声で告げた。
「しい主の方々が、法占拠者を追いしに来てくれたのよ。せいぜい、警察を呼ばれないうちに荷物をまとめててきなさい」
『ま、待て! のり子! 悪かった、俺が悪かったから! 頼むから取り消してくれ!』
「さようなら」
のり子は迷うことなく、通話終ボタンをタップした。