"「嫁は廊下で寝ろ」私が二度と帰らなかった理由" 第10話
「さくない」
義父のりは、そこで終わらなかった。
「みつ子。恵里さんのお母さんのことをいたのもおだな」
義母はし苛ったように言った。
「だって本当のことでしょ。夜まで働く母親に育てられたんだから」
「の親を、親戚ので悪く言ったのか」
義母は瞬黙り、すぐになった。
「でもあの子、して稼いでもいないのに仕事仕事って。のこともしないで、毎晩遅く帰ってきて――」
義父はく息を吐いた。
「おら、本当に恵里さんの仕事をらないのか」
孝介が面倒そうに答えた。
「ってるよ。会社やってるんだろ。さい会社だけど」
数秒の沈黙。
そして義父が言った。
「さくない」
その言で、話の空気が変わった。
「恵里さんの会社は、社員が百以いる。うちの会社とも取引がある。俺が今いる仙台支で使っている業務システムも、恵里さんの会社が作ったものだ」
孝介の声が裏返った。
「え? そんなきい会社なの?」
「俺は仕事で何度も恵里さんの会社にをげてる。無理な納期を頼んだことだってある」
義母の細い声が聞こえた。
「でも、そんなこと言も……」
「言ってたはずだ。会社を経営しているって。おたちが勝にさい会社だと決めつけて、話を聞かなかっただけだろ」
私は目を閉じた。
両の事会で義父が私を見た瞬、わずかに固まったことを覚えている。
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あの、義父は私が取引先企業の社だとすぐ気づいていた。
事会のあと、義父から直接話があった。
「仕事のことをで話した方がいいか」
そう聞かれた私は断った。
では肩きを持ち込みたくない。
孝介には会社を経営していることだけ話してある。
そう説すると、義父は「分かった」と言い、それ以来度もで仕事の話をしなかった。
代わりに会社へは、息子の妻が取引先企業の経営者になったことを正式に報告した。私の会社でも同じように利益相反を避けるため担当をし、案件の窓は副社の岡へ移していた。
話の向こうで義母が取り乱し始めた。
「孝介、あなた会社の名もらないの?」
「らないよ。だってちゃんと聞いたことないし」
「なんでらないのよ。奥さんでしょう!」
まで「さい会社の社気取り」といていたが、今度は息子を責めている。
義父はの声を遮った。
「勘違いするな」
い声だった。
「俺がっているのは、恵里さんが会社の社だからじゃない」
話の向こうが静まった。
「普通の会社員でも、パートでも、専業主婦でも同じだ」
義父は声をめた。
「仕事から帰ってきたの布団を廊にして笑う。そんなことのどこがまともなんだ」
その言葉を聞いた瞬、私は泣いた。
社員百だからではない。
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取引額がきいからではない。
夜に帰宅したのとして、ってくれた。
この、私はずっとその言葉が欲しかったのだとう。
義父が再びをいた。
「みつ子」
「……何よ」
「昔のことを忘れたのか」
話の向こうで、義母が息をのんだ。
「どうしよう……」
さな声が漏れた。
孝介もが分かっていないようだった。
私にも分からなかった。
義父が言う「昔」とは何なのか。
やがて義父は、「今の夕方、京へ戻る」と告げた。
午の仕事を休み、仙台から幹線に乗るという。
そして私へこう言った。
「恵里さん。今夜半、度だけへ来てくれないか」
私は迷った。
義父は続けた。
「泊まらなくていい。階にもがらなくていい。ただ、俺のからあいつらへ話しておきたいことがある」
私はい切って聞いた。
「今おっしゃった、昔のことですか?」
義父はく答えた。
「そうだ」
その夜。
、あの階の廊で起きたことを、私は初めてることになる。