"磨かなかった靴" 第13話
へく切符
のたいがった朝、健太たちは復興の根ので修理仕事を続けていた。靴磨きの客はなくなったが、網の補修が評判になり、魚や荷が仕事を持ってくるようになった。磨き布を握っていたで太い糸を引くと、指の皮がめくれた。それでも、仕事が増えることは嬉しかった。の使用料をようやく回分納めることができた、米川は「次は期限までに頼むぞ」と言って、しだけ笑った。
信吉のの痛みは引いた。医者に診てもらうほどのが惜しく、本は古布を巻いて働き続けようとする。お志乃が「それで歩けなくなったらどうする」と叱り、りいの診療所へ連れていった。骨にきな異常はなかったが、しばらく無理をしないよう言われた。信吉はそうだったが、座ってできる仕事を増やすことにした。
そのに健太は、兄の掛かりを追うための旅費を貯めた。にいた額が目標に届いた夜、で何度も数え直した。利夫は「俺が緒にく」と言った。信吉は「の方は任せろ。だが、暗くなるに向こうで宿を探せ。無理なら帰ってこい」とを押した。お志乃は弁当をつ用し、片桐にき先と帰る予定のをき残すよう言った。
列に乗った健太は、窓のを見つめていた。
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、兄とはぐれた駅からへ向かうことが、何かをやり直すようにえた。利夫は隣の座席で居眠りしかけ、々目を覚まして「切符、落とすなよ」と言った。内には仕事帰りらしい男、荷を抱えた女性、制姿の学が乗っていた。誰も健太の事をらない。当たりの顔をして座っていられるのが、し議だった。
目の町へ着くと、は静の控えた所を頼りに、さな靴修理を訪ねた。主の老は健太の話を聞き、俊が働いていたことを認めた。「を傷めているが、辛抱い青だったよ」。健太は「今は」と聞いた。老は奥の戸を指さした。「昼は仕入れの伝いにてる。夕方には戻るはずだ」。健太は元がふわふわするような気がした。兄はきている。あと数で会える。
待つ、老は俊のことを話した。の指のきが悪く、い荷を持つ仕事は続けられなかった。最初は靴底を張るだけでもがかかったが、と具の使い方を夫し、今では仕げを任せられるようになったという。「本は昔のことでまだ気にしているが、ここではよく働いているよ」。健太は急に配になった。兄にとって、今の暮らしはようやく掴んだ所なのかもしれない。
夕方、通りの向こうから背のい青が歩いてきた。黒い着の袖を片方だけ折り、に包みを提げている。
顔はやつれていたが、目元に見覚えがあった。健太はの戸で固まった。「……兄ちゃん」。青がを止めた。包みが面に落ち、紐がほどけた。何か言おうとして唇をかしたが、声がなかった。
俊は健太を見つめ、それから利夫を見た。「おも、いたのか」。利夫がくをげると、俊は初めて健太の方へ歩いてきた。健太は抱きつきたかった。だが、兄のが自然に曲がっているのを見た瞬、体が止まってしまった。「その……」。俊はで袖を引き、「たいしたことはない」と答えた。分の言葉が喉につかえて、ともそれ以話せなかった。