みかん小説
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"磨かなかった靴" 第3話

裏の

篠田のの裏を訪ねるまでに、健太はかけた。信吉には「聞くだけだ。揉めない」と約束し、常夫には姿を見かけても騒がないよう頼んだ。昼の荷運びが段落したころ、裏には箱のと油の匂いが漂っていた。健太が声をかけようとすると、荷台のからのが現れた。

「お、にここで靴を磨いてたろ」。は顔にいそばかすがあり、健太と同じくらいの背丈だった。健太は見覚えがあった。先、駅で何度か見かけ、堂の残り物を分けたことのある宗男だった。「お、ここで働いてたのか」。宗男は周りを確かめてから答えた。「荷を運ぶだけ。だけど帰れない」

宗男は、紹介に連れられて方の作業へったことがあるという。働けばべさせてもらえ、何かかすれば賃をまとめて渡すと言われた。実際には寝具代、事代、具代が引かれ、受け取れた銭はわずかだった。齢を尋ねられた、と言うよう教えられたが、まだにもなっていなかった。逃げて京へ戻ってからも、紹介した者に顔を覚えられ、別の仕事を探しにくくなった。

「篠田が皆を連れてったのか」

「いや。話をまとめてたのは寺岡って男だ。篠田は荷を預ける仕事を回していた。誰の責任かって聞かれると、皆『俺じゃない』って言う」

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。宗男は唇を噛んだ。健太は兄の名をした。「佐伯俊ってをらないか」。宗男のが止まった。「そのが、おの兄ちゃんなのか」

宗男は俊をっていた。方の作業で、若い者が持ち物を取りげられないように注し、字の読めないへ契約を読み聞かせていた青だという。健太は胸をくした。「どこにいる」。だが宗男は答えるに、の袖をまくった。肘のにい傷があった。「この傷ができた、俊さんが病院まで連れてってくれた。そこで度だけ別れた。そのあと、戻ってこなかった」

健太は兄がいなくなった理由を聞きたかった。宗男は「逃げたと言うもいる。でも違う」と言った。作業の帳面から、のりないの齢がき換えられているのを俊が見つけ、町の相談所へ持ち込もうとしたらしい。その直、倉庫にあった具がりなくなり、俊が盗んだのだと噂になった。宗男は見ていない。「何が本当か、俺には分からねえ」。それでも兄が子どもを助けたことだけは確かだと繰り返した。

のから「宗男!」と呼ぶ声がした。宗男はびくっと肩を震わせた。「これ以いたら俺が叱られる」。健太が引き留めると、はさな切れを渡した。裏に「寺岡 運送請負」とりきがあり、に暮れの集荷所が記されている。

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「あの男を見れば分かる。だけど、絶対にでくな」

帰り、健太はを何度も折り直した。利夫が半何も言わなかったこと、信吉が篠田を恐れたこと、宗男が紹介の名をにするに目を伏せたことが、つながり始めていた。兄を探すは、らずに誰かを危険へづけるでもある。健太はうれしさと恐ろしさの入り混じった気持ちで、空き部へ戻った。

そこで待っていたのは、仲たちのたい線だった。常夫が朝から仕事をしていないという。信吉は「しい所が決まるかもしれないから話しおうと言ったのに、おはまたいなくなった」と叱った。健太は宗男から聞いたことを話したが、信吉は最まで聞こうとしなかった。「探したいなら探せ。でも、仲の飯を俺に背負わせるな」。その言に健太は何も言い返せなかった。

夜、常夫が使っていた毛布の隅から、さな片が落ちた。『仕事あり 寝る所あり 来週発』。の端には、篠田ので見たものと同じ朱の印があった。健太は震えながら、眠っている常夫の顔を見た。自分が兄の靴を追い始めたわずか数のに、弟のように暮らしていたが、同じへ誘われていた。

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