"義父の古希祝いで母娘の席が消えた――予約名義は私" 第6話
隠蔽された娘
ホテルから持ち帰った枚のA4用を、私は姉・由美子ののリビングテーブルに広げていた。
あの、啓介がホテルに話をかけ、妻と娘の席を自ら消しっていた事実を突き止めた直、私はを連れて自宅をた。姉のにを寄せ、啓介からの着信をすべて拒否し、必なの回りの荷物だけを運びしたのだ。
元にあるのは、自宅の類棚の奥くから持ちした、通の古い茶封筒だった。
表には、の消印と、以んでいた区の区役所の公印が押されている。私は震える指先で糊付けを剥がし、から折り畳まれた数枚の類を引きした。
枚目は『養子縁組届 受理証』。 そして枚目は、その直に発された馬の『戸籍謄本』の原本だった。
私は窓から差し込むのので、黒い活字のを指先でなぞった。
『者:馬啓介』 『妻:馬菜央』 『女:馬(実父母:〇〇〇〇、菜央 養子縁組:平成〇)』
続柄の欄には、誰の目にもらかな楷で、はっきりと『養女』の文字が刻まれていた。
の。私と啓介が再婚してが過ぎた頃、啓介は自ら私とを所のファミリーレストランに連れし、真剣な差しでこう言ったのだ。
『菜央、ちゃんを俺の本当の娘にしたい。法律のでも、俺が責任を持って守る父親になりたいんだ。
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養子縁組の類をそう』
あの、はし照れくさそうに、でもびがるほど嬉しそうに頷いた。でを繋いで区役所へき、窓に類を提した帰り、啓介はにイチゴのショートケーキを買ってくれた。
その帰り、私が『お義母さんたちにはいつ報告するの?』と尋ねたのことを、今でも鮮に覚えている。
啓介はしだけ困ったように眉をげ、私をさせるように優しく笑った。
『母さんには、俺からタイミングを見てちゃんと話すよ。血の繋がりを気にするだから、話や類じゃなくて、俺のから直接顔を見て説得した方がいい。俺に任せてくれ』
私はその言葉を信じた。夫が族のを取り持ち、いつか必ずを温かく迎え入れてくれると信じ切っていた。
それから、お盆や正に実へ顔をすたび、啓介は『今は親父の嫌が悪いから』『美がいるとややこしくなるから』と言い訳をね、報告を先延ばしにし続けた。
私は彼がただ器用なのだとっていた。しかし、現実は違った。
あの古希祝いの席で、義妹の美は叫んだのだ。『どこの馬の骨ともれない母娘にべる資格なんてない』と。そして義母のふみ子は頷いた。『族には線引きが必なのよ』と。
もし、彼女たちがが戸籍の正式な孫であり、姪であることをっていたなら、どれほど酷なであっても、親族名のであんな言葉を吐けるはずがない。
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啓介は、、度も話していなかったのだ。
実の両親や妹からられるのが怖いという、ただそれだけの勝で卑な保のために、自ら望んで養子にした娘のを、も実の歴史から消しり、秘密にし続けていた。
そして、古希祝いの席で母と妹が『連れ子を連れてくるなら席しない』と言いした、彼は真実を告げて娘を守るのではなく、自らのでホテルに話をかけ、娘の席を消しるという最悪の裏切りを選んだ。
りすら湧いてこなかった。ただ、氷のような底れぬたさが、私の爪先からの頂点へと広がっていった。
私はスマートフォンをに取り、拒否設定を解除して、啓介の番号をタップした。
回目のコールの、掠れた声が聞こえてきた。
『……菜央か? 頼む、話を聞いてくれ!』
「啓介、つだけ聞きくわ。事実だけを答えて」
私は戸籍謄本を見つめながら、平坦な声で言い放った。
「あなた、と養子縁組をしたこと、お義母さんたちにいつ話したの?」
受話器の向こうから、切の音が消えた。息を呑む気配すら途絶え、完全なの静寂が流れた。
秒、秒。
「……話して、ないんだな?」
『……まだ、言ってなかった』
震える声で絞りされたその言を聞いた瞬、私のので、この男に対するとしてのが、完全に息絶えた。