"義父の古希祝いで母娘の席が消えた――予約名義は私" 第2話
馬の骨の線引き
「美さん……違いじゃないって、どういうことですか?」
私が問い詰めると、美は肩をすくめ、あざ笑うように角を吊りげた。
「言葉通りのよ。今はね、馬の正真正銘の親族だけの集まりなの。内輪のお祝いなのよ」
が怯えたように私のスカートの裾をぎゅっと握りしめた。のさな指先が、微かに震えているのが伝わってくる。
「私は啓介さんの妻です。それに、あちらの席には従兄弟の奥様や、義理の叔父様方もいらっしゃいますよね? 血の繋がっていない親族の方もたくさん座られています」
私が会の円卓を指差すと、美は馬鹿にしたようにで笑った。
「だから何? あの方たちはちゃんとしたお柄から嫁いでこられた方々よ。あんたみたいに、父親の違う連れ子を連れて転がり込んできた女とは訳が違うの」
美のたい線が、私の隣で直しているへと向けられた。
「どこの馬の骨ともれない母娘に、万円もする級ホテルの料理をべる資格なんてないのよ。席代の無駄よ、無駄」
その瞬、の顔からさっと血の気が引いた。抱えていた袋を握りしめるがく張り、きな瞳にみるみるうちに涙が溢れしていく。歳の子供に対して、の親族全員が見守るで投げつけられた、あまりにも残酷で無慈な言葉だった。
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しかし、周囲にいた数の親族たちは、美の暴言を聞いても誰として止めようとしなかった。
それどころか、気まずそうに線を逸らす者、何事もなかったかのようにシャンパングラスを傾けて雑談を続ける者、あるいは美の言葉に同調して蔑むような笑いを浮かべる者ばかりだった。このにおいて、私とは最初からしないものとして、確な「異物」として排除されていたのだ。
しれた受付の脇から、義母のふみ子(歳)が威厳たっぷりに歩み寄ってきた。仕ての良い留袖を着た義母は、淡な差しで私とを瞥した。
「菜央さん、美の言う通りよ。族にはきちんとした線引きが必なの。あんたたちがかましく同じ席に座るなんて、親族の恥だわ」
私は義母の言葉を聞き流し、その数メートルろにっていた夫・啓介を見つめた。
啓介はグレーのスーツを着て、ポケットにを突っ込み、スマートフォンの画面をスクロールしていた。今の美と義母の言葉は、違いなく啓介のにも届いていたはずだった。
「啓介さん」
私が静かに名を呼ぶと、啓介はひどく面倒くさそうに顔をげ、私と目をわせようともせずに言った。
「……で話そう」
「で? 今、が何を言われたか聞こえていたでしょう? 父親として、何か言うことはないの?」
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啓介は周囲の親族の目を気にするようにキョロキョロと辺りを見回し、苛ちを隠そうともせずに吐き捨てた。
「ここで騒ぐなよ! 親父のれ台なんだぞ。の対応をしろよ、みっともない」
その言で、私の胸のにあった最の未練が、音をてて砕け散った。
この男はっていたのだ。私との席が最初から用されていないことを、最初からすべてっていながら、平然と私たちをここまで同させ、親族全員ので晒し者にしたのだ。
美が勝ち誇ったように胸を張り、私を指差した。
「ほら、お兄ちゃんもああ言ってるじゃない。迷惑だからさっさと帰ってくれない? おじいちゃんの顔にを塗るにね」
私は鳴り散らしもしなければ、泣き崩れもしなかった。
ただ静かにのを握り直し、騒ぎを聞きつけて奥からりで駆け寄ってきたホテルの宴会支配に向き直った。