"義父の古希祝いで母娘の席が消えた――予約名義は私" 第1話
脚の子
曜の午。都の等に建つグランドホテル「オークラ」の階、宴会フロアには、柔らかなシャンデリアのがり注いでいた。入れのき届いた毛のい絨毯を踏みしめながら、私——藤崎菜央(ふじさき なお・歳)は、歳になる娘の(こはる)のを引いて歩いていた。
「ママ、おじいちゃんんでくれるかな?」
がし緊張した面持ちで、胸元に抱えたさな袋をそっと見つめる。袋のには、義父・哲夫の歳の古希を祝うために、が何週もからで作りしていたフォトアルバムが入っていた。哲夫の若い頃の写真から、親族の集まりで撮りためたスナップ写真を枚ずつ丁寧に台に貼り、鉛でらしい飾り付けをした、世界にたったつだけのプレゼントだった。
「もちろんんでくれるよ。が懸命作ったんだもの」
私はのを優しく撫で、微笑みかけた。
今は、義父・哲夫の古希を祝う親族総の事会だった。方にむ親族や従兄弟たちも含め、当初の予定では総勢名が席することになっていた。
この規模な事会の準備を義妹の美(みき・歳)から持ちかけられたのは、ヶのことだった。
『ねえ菜央さん、歳のお祝いどこも空いてないのよ。
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菜央さん、こういう幹事みたいなな作業得でしょ? 予約から何から全部やっておいてくれない?』
義妹からの連絡は、いつも唐突で方な丸投げだった。夫の啓介(けいすけ・歳)に相談しても「美は仕事が忙しいんだから、専業主婦のおがやってやればいいだろ」と面倒そうに返されるだけ。結局、私はで何軒ものホテルや料亭に話をかけ、子を利用する齢の親族のためのバリアフリー線を確認し、さな子供用のベビーチェアの台数を数え、席者ひとりの物アレルギーや持病による事制限を聞いて回った。
しでもがあればホテルの厨に直接掛けい、減塩メニューやアレルギー除の特別料理を配した。付として求められた万円も、で親族同で清算するという約束のもと、私の独代の貯座からて替えて支払っていた。契約名義は、私「藤崎菜央」だった。
すべては、義父の節目を笑顔で祝うため。誰として嫌ないをしない会にするためだった。
宴会「桐の」のに到着すると、すでにくの親族が集まり、談笑していた。受付のテーブルには、席者の名札が然と並べられている。
私は受付のにち、名札を確認していった。しかし、いくら探しても、私の名が見当たらない。
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「あれ……?」
もう度、端から端まで指先でなぞるように確認する。の名もなかった。
並んでいる名札の数は、全部で枚。
胸の奥にたいものがった。私は会のかれた扉からを覗き込んだ。広々とした宴会には掛けの円卓が然と並べられていたが、用されている子の数を数えると、やはり脚しかなかった。
「あの、すみません」
私は通りかかったホテルの配膳係のスタッフに声をかけた。
「名札とお席がつりないようなのですが。当初の予約は名でしたよね?」
スタッフは元の子端末を操作し、困惑したように眉をひそめた。
「恐れ入ります、藤崎様。本のご宴会は、最終確定として名様で承っておりますが……」
「え? でも、私が予約した点では名でした。変更の続きなんてしていません」
「いえ、違いじゃないよ」
背から、甲いややかな声が割り込んできた。
振り返ると、華やかなワインレッドのパーティードレスにを包んだ義妹の美が、ワイングラスをにして笑いを浮かべてっていた。