"借金3億の旅館を継いだ私を捨てた夫の誤算" 第3話
突然の訃報と淡な背
父の郎は、昔気質の器用な職肌の男だった。 話を嫌い、用件だけを無骨に伝えてすぐに切るようなだったが、今の半ば、珍しく曜の夜に実から話をかけてきたことがあった。
『真帆か。……今の盆、勇気を連れて帰ってこられんか』 受話器の向こうの父の声は、どこか微かに掠れていた。 『宿のことでな、おにし……話しておきたいことがあるんだ』 『話って、何? お父さん』 『話で話すようなことじゃない。顔を見て話す』
その夜、私は恐る恐る拓也に相談した。リビングのソファでテレビのバラエティ番組を眺めていた拓也は、画面から線を切さずに吐き捨てた。 「盆休み? 特急の指定席が番バカい期じゃないか。しはを使えよ。の連休ならしはくなるだろ。どうせした話じゃない、老の暇つぶしだ」
私自、会社の決算棚卸しとなって休暇の調が難しかったこともあり、「の連休にで伺います」と父に折り返しの話を入れてしまった。 『そうか……にな』 受話器の向こうで、父はく息を呑み、それだけ呟いて話を切った。 あの、なぜ万難を排してでもで駆けつけなかったのか。なぜ、拓也の嫌を恐れて波をてないを選んでしまったのか。その悔は、今も私の胸を鋭利な刃物のように抉り続けている。
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、曜の午過ぎ。 職のデスクで伝票理をしていた私のスマートフォンが、激しく振した。 画面に表示されたのは『の宿』の固定話の番号。 話にると、受話器の向こうから、仲居の照子さんの激しく乱れた泣き声がび込んできた。
『ま、真帆ちゃん……! 旦さんが……お父さんがね、今朝、帳で倒れて……! 救急で町病院に運ばれたんだけど……さっき、息を引き取られたって……!』
急性筋梗塞。歳だった。 持病もなく、まで元気に宿泊客のために湯守をしていた父の、あまりにも突然の最期だった。 のが真っになり、指先がガタガタと震えた。 『旦さんね……この、真帆ちゃんと勇気君がに来てくれるって、そればっかり楽しみに話してらしたのに……!』
私は司にをげて退し、勇気の通う都へ駆けつけた。制姿の勇気は、宿駅のホームで目を真っ赤にして私を待っていた。 特急あずさにび乗る直、私は拓也の携帯へ震える指で話をかけた。
『拓也さん! 父が……父が急にくなったの! 今すぐ信州へ向かって!』 しかし、受話器から返ってきた夫の声には、微の揺も悼の響きもなかった。 『……ああ、そうか。でも今は無理だぞ。午からな役員プレゼンが入ってて抜けられない。の通夜も休勤があるから、曜の告別式には顔をすよ』 背から、会社の同僚と談笑する呑気な笑い声が聞こえていた。