"庭付き新居に押しかける長男夫婦、引越し当日に絶句" 第1話
「俺たちも緒にむから」
「聞いたよ。いい話じゃないか。もうしいも買ったそうだな」
玄関にっていた男の琢磨は、祝いの言葉をにしているはずなのに、顔にはを祝うような表などしも浮かんでいなかった。その横では妻の真理亜が、まるでもう自分のであるかのように内を見回しながら、い笑みを浮かべている。
「菜園と庭付きの軒なんでしょう? お母さんには広すぎますよね。ちょうどよかったわ。私たちも義と緒に引っ越しますから」
私はわず聞き返しそうになった。
誰が、あなたたちを呼んだの。
けれど、その言葉はみ込んだ。
琢磨は私の沈黙を承諾だと受け取ったのか、さらに嫌よく続けた。
「親は男とむものって昔から決まってるんだよ。母さんももう62だろ? これからを取る方なんだから、俺たちが緒にんでやった方がだ」
「私は緒にんでほしいなんて、度も言っていないけど」
私が静かに答えると、琢磨はで笑った。
「がるなって。父さんもいなくなって、で何ができるんだよ。それに今断ったら、俺は将来、母さんの介護なんか絶対にしないからな」
真理亜も腕を組み、当然のことを教えてやると言わんばかりの顔をした。
「そうですよ。老になってから『助けて』と言われても困りますからね。
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今のうちに族で助けっておいた方がお母さんのためです」
助けう。
その言葉ほど、この夫婦に似わないものもない。
私はの顔を見ながら、胸の奥に議なくらい静かなものが広がっていくのをじていた。
以の私なら腹をてただろう。
どうして勝に決めるの。
どうして私のなのに、私のを聞かないの。
どうして自分たちがむ提で話をめるの。
けれど、このの私はらなかった。
「そう。そこまで言うなら、好きにすればいいわ」
私がそう答えると、琢磨と真理亜は瞬驚いたあと、すぐに顔をほころばせた。
「やっと分かったか」
「お母さんも素直になればいいんですよ。私たちだって鬼じゃないんですから」
鬼じゃない。
その言葉に、私は危うく笑いそうになった。
が帰ったあと、奥の部から女の美がてきた。玄関の方を確かめてから、ようやく声を潜める。
「った?」
「ったわ」
「本気で緒にめるとってるんだね」
「ええ。疑ってもいないみたい」
美はしばらく黙っていたが、やがてさく息を吐いた。
「作戦通り、うまくいったわね」
笑ってはいたが、その目はし寂しそうだった。
実の兄を相に、こんな準備をしなければならない。
それがしくないはずがない。
私も同じだった。
どんなに憎たらしいことを言われても、琢磨は私が産んだ息子だ。
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抱きげたのさも、初めて「お母さん」と呼ばれたの声も覚えている。
だからこそ、私はい、諦めきれなかった。
いつか気づいてくれる。
いつか普通の親子に戻れる。
そんな期待を、何度も何度も拾い直してきた。
けれど、その期待を捨てる決がついたのは、夫がくなったあとのことだった。
夫の葬儀の、琢磨は棺ので私を見ながらこう言った。
「これで母さんもぼっちだな。もう俺たちに頼るしかないだろ」
その、私ははっきり理解した。
この子は、父親を失った私を配しているのではない。
くなった私を見て、自分が優位にてると考えている。
そして、それは突然始まったことではなかった。
えばずっと昔から、兆しはあった。
琢磨がまだ5歳だった頃。
あの子のを歪める最初の言葉を与えたのは、私ではない。
私が頼るしかなかった、あののたちだった。
「琢磨は特別な子なんだ」
義父と義母が繰り返したその言葉が、やがて息子のでどう育っていったのか。
私は何もかけて、その結果を見ることになった。
そして今、その結果に終止符を打とうとしていた。
「引っ越しの、楽しみね」
私が言うと、美は苦笑した。
「お兄ちゃん、絶対るよ」
「るでしょうね」
「話、すごいことになるとう」
「そのは、源を切ればいいわ」
私たちは顔を見わせた。
もう戻りする気はなかった。
琢磨が「自分たちの居」だとい込んでいるそのに、彼らが到着する。
私は別の所へ向かう。
誰にも邪魔されない、本当のしい暮らしへ。