"「3月末に出ていけ」離婚を迫る夫が知らない真実" 第13話
吹きさらしの隘
桜の季節が終わり、初の差しが照りつける。
都からくれた私鉄沿線の吹きさらしの業帯に、築を超える造階建てのモルタルアパートがち並んでいた。
湿気のこもった畳の暗い。壁は茶く煤け、畳の隙からは隙が吹き込んでくる。
秀哉は汚れた作業着のまま、畳のに敷かれた万に倒れ込んでいた。
体が軋むように痛む。解体現での雇い労働と、夜の事の警備員。元エリート商社マンのプライドなど、きるためのパンのには何の役にもたなかった。
当の万千円をにしても、そこから容赦なく引きされていく。
相楽弁護士を通じて届いた、伊佐美への貞慰謝料百万円の分割返済。 徹夜の学学のための養育費積。 そして、会社への正受の返済。
毎、座に振り込まれるわずかな賃は、からへと械に引き落とされ、元に残るのはに数百円の費だけだった。
「……くそっ……なんで俺が、こんなところで……」
秀哉は震えるで、売りのカップラーメンに湯を注いだ。
麻とは、あの事件の直に完全に破局していた。 宗太の養育費を請求する調を起こされ、方裁判所からは与の差し押さえ命令がっていた。
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麻自も、方の歓楽で昼夜を問わず働きながら、荒んだ活を送っているという。
机のに置かれたスマートフォンの画面をタップしてみる。 かつて数百件も登録されていた同僚や取引先の連絡先は、誰として応答しない。全員から着信拒否され、LINEのアカウントも消されていた。
ふと、テレビのニュース番組が目に入った。
画面には、華やかなスポットライトを浴びる伊佐美の姿が映しされていた。
『本賞受賞記サイン会! 気作・咲伊佐美先、最作は初版万部スタート!』
美しい着物にを包み、性と気品に満ちた笑顔でファンにペンをらせる伊佐美。 その傍らには、すっかり背が伸びて頼もしい青の顔つきになった徹夜が、誇らしげに母親をエスコートしていた。
『先、次回作のテーマは何でしょうか?』
レポーターの問いかけに、伊佐美は澄んだ瞳をカメラに向け、穏やかに微笑んで答えていた。
『切なを守るための、性と勇気です。理尽な悪に傷つけられても、決して自分を諦めないのための物語をき続けたいとっています』
画面ののは、秀哉のいる暗い畳半とは、完全に別の次元の、り輝く世界にっていた。
「伊佐美……徹夜……俺が悪かった……戻ってきてくれ……!」
秀哉はテレビ画面に縋り付き、涙とを垂らしながら叫んだ。
しかし、液晶画面のたいガラスは、男のれな叫びを無慈にね返すだけだった。
かつて自分の元に傅いていたはずの妻。 いつでも捨てられると信じ込んでいた、従順な形。
その形の仮面のに隠されていた本物の性と力を見誤り、自らの傲と誠実によってすべてを燼に帰せしめた男の、これが自業自得の結末だった。