"「嫁には1円もやらない」義母へ、家族3人の決断" 第19話
作らなかったちらし寿司
桜の季節が巡り、がやってきた。 義母の歳の誕だった。
同居していた、私は毎このになると、朝から錦糸卵を焼き、椎茸と干瓢を甘辛く煮含め、の芽を散らした豪勢なちらし寿司を作っていた。 『お父さんの好物だったからねえ』と、自分が作らせたことすら忘れ、娘ので誇らしげに自していた義母の顔が、い記憶の彼方へと霞んでいた。
その、私は定まで普通に会社で働き、夕方に陽太を保育園へ迎えにき、スーパーで特売の鶏肉とキャベツを買って帰宅した。 夕の献は、陽太が好きな鶏の唐揚げと、具だくさんの豚汁だった。 ちらし寿司の「ち」の字も、私のには浮かばなかった。 作らないとを張ったわけではない。 ただ、誰かの嫌を取るためだけに自分のとをすり減らす活から、完全に解放された結果、いす必すらなくなっていたのだ。
「ママ、今の唐揚げ、カリカリで超おいしい!」 「たくさんおべ。は学の入学式なんだからね」 テーブルを囲むのには、温かな湯気と、屈託のない笑い声が溢れていた。
、孝介が器を洗い、私が陽太のしいランドセルに防犯ブザーを取り付けている、ふとリビングの壁に貼られた枚の絵に目が留まった。
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先週、陽太が保育園の卒園制作として描いて持ち帰ってきた絵だった。
タイトルは、『ぼくのかぞく』。 真っな画用の央に、族が満面の笑みで並んでいた。 番に背のいパパ。側に優しく笑うママ。 そして真んで、ピカピカの赤いランドセルを誇らしげに掲げる陽太自。 そこにはもう、きな丸い鏡をかけた祖母の姿は描かれていなかった。
「陽太、バーバの絵は描かなかったの?」 孝介が洗剤の泡を流しながら、優しく尋ねた。 陽太はブロック遊びのを止め、あっけらかんとした顔で答えた。
「バーバは、あっちのきなおでで暮らしてるでしょ? ここは、パパとママとぼくのおだから、これでいいの!」
子どもは残酷なまでに正確だった。 誰が自分を真にし、誰が々の活を守ってくれているのか。 血の繋がりを盾にして傲に振るうよりも、毎朝温かいご飯を作り、を引いて歩いてくれる母親のぬくもりを、息子は何よりも尊いものとしてに刻んでいたのだ。
孝介が私の隣に座り、そっと肩を抱き寄せてくれた。 「織。……本当に、ありがとうな。俺たちの本当の族を、取り戻してくれて」 「ううん。あなたが緒に歩いてくれたからよ」 私たちは顔を見わせ、静かに微笑みった。