"「家は俺が守る」息子を信じた母、4年後の衝撃" 第9話
消された帰宅の希望
理恵は、のやり取りをつずつ読みげました。
その期を、私は覚えていました。
リハビリで杖だけを使って歩けるようになり、医師から「宅環境がえば自宅活も検討できます」と言われた頃です。
私は嬉しくて、そののうちに直へ話をしました。
「私、帰れるかもしれないのよ」
けれど直は、「は傷んでいるから無理だ」と言いました。
当の私は、その言葉を信じていました。
ところが夫婦のメッセージには、話を受けた直の直の本音が残っていました。
《母さん、帰れるかもしれないらしい》
《じゃあ、お母さんのことどうするの?》
《今ていけって言ったら、理恵も困るだろ》
《でもお義母さん本に話さないと》
《もうし待ってくれ》
《何を待つの?》
《俺が何とかする》
画面を見ながら、私は自分のをく握りました。
直はっていたのです。
私がへ帰りたかったことを。
歩けるようになるため、毎どれだけリハビリを頑張っていたかもっていました。
それでも、貞子さんへ事を話すのが気まずいという理由で、私には「が使えない」とわせ続けました。
理恵は次の記録をきました。
。
直が私への面会を完全にやめていた頃です。
《まだお義母さんに本当のこと言ってないの?》
《母さんはが使えないとってるから》
広告
《それ、嘘でしょう》
《が古いのは本当だ》
《めないほどじゃないでしょう》
《母さんが帰ってきたら、貞子さんはどうするんだよ》
《だからで話すしかないって言ってるの》
そして最に、
《俺が何とかするから黙っててくれ》
とかれていました。
藤沢先が静かに言いました。
「なくともこの記録を見る限り、直さんはさんが自宅へ戻れる能性をったも、事実と異なる説を続けていますね」
直は何も言いませんでした。
「俺はを守った」という説は、もう成しませんでした。
貞子さんは両で顔を覆って泣いていました。
「私がんでいたから……」
「違うわ」
私はすぐに言いました。
「あなたが悪いんじゃない」
「でも、私がいなければさんは……」
「あなたには、私が戻らないって言っていたんでしょう」
「はい」
「だったらあなたも騙されていたのよ」
私は息子へ向き直りました。
「直」
直がゆっくりと顔をげました。
「私はに戻りたいって、何度もあなたに言ったわね」
「……うん」
「私が歩けるようになったことも、っていたのね」
「うん」
「っていて、戻れないとわせたのね」
直の目から涙がこぼれました。
「ごめん」
「どうして?」
「怖かったんだ」
「何が?」
「母さんに本当のこと言うのが」
直は両で顔を覆いました。
「貞子さんをませたのは俺だ。最初は、かのつもりだった。
広告
しい部が見つかるまででいいとってた。でも母さんが帰れるかもしれないってなって、今さら『実は別のがんでる』なんて言えなくなった」
「で話せばよかったでしょう」
「言えるわけないだろ!」
突然、直が声をげました。
「俺が勧めてんでもらったんだぞ。それなのに母さんが帰るからていってくれなんて、理恵にも貞子さんにも言えなかったんだよ!」
理恵がたい声で言いました。
「だからって、お義母さんをも騙していいことにはならない」
直は黙り込みました。
「最初はし待ってもらうだけだった」
彼はさな声で続けました。
「か言わなかったら、次はもっと言いにくくなった。半経ったら、母さんに顔を見せたらのこと聞かれるのが怖くなった。だから面会にもけなくなった」
私は、胸の奥にいものが落ちるのをじました。
。
仕事が忙しいのだとっていた。
張がいのだとっていた。
私が負担になってはいけないとい、自分から話を控えていた。
でも違いました。
直は、私の顔を見れば自分の嘘をいすから、来なかっただけなのです。
「よ」
私は言いました。
「私は、今は来るかもしれないって待っていたの」
直は畳へ両をつきました。
「ごめん、母さん」
「そのは戻らないわ」
「分かってる」
「いいえ。あなたはまだ分かってない」
私は杖をつき、ゆっくりちがりました。
「私が失ったのは、ただで暮らすじゃないの。自分で決めるよ」
直は顔をげました。
私は初めて、息子の涙を見てもを変えませんでした。