"「家は俺が守る」息子を信じた母、4年後の衝撃" 第3話
息子が渡そうとしなかった鍵
桜井さんに言われたその晩、私はほとんど眠れませんでした。消灯の部で正の写真を見つめながら、の会話をつずつい返しました。根が悪い、が湿っている、回りがおかしい。事にはおがかかるから急がなくていい。がんでいないは傷む。そのどれも、私は実際に自分の目で見たわけではありません。
翌朝、私は直へ話をかけました。
呼びし音がく続きました。ないかもしれないとった頃、ようやくい声がしました。
「もしもし」
「直、私だけど」
「母さんか。今仕事なんだけど」
昔なら、その言で「ごめんなさい」と話を切っていたでしょう。でもそのは違いました。
「しだけ聞いて。私、度を見にきたいの」
話の向こうで、はっきりと息を止める気配がしました。
「だめだ」
あまりにもい返事でした。
「どうして? から見るだけでもいいのよ。施設のでくまで連れていってもらえるから」
「危ないって言ってるだろ。今、事が入ってるんだ」
「事?」
初めて聞く話でした。
「何を直してるの?」
「とか、回りとか、いろいろだよ」
「は、おがかかるから直せないって言ってたでしょう」
直は瞬言葉に詰まりました。
「最限だけやってるんだよ。りいの業者に頼んで」
「見積は?」
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「俺がて替えてるから」
「じゃあ終わったら見にけるわね」
「まだかかる」
答えはすべて、私をからざける方向へ向かっていました。私は識して声を穏やかに保ちました。
「そう。ところで、の鍵はどうなってるの?」
直は黙りました。
「私、の鍵をまだ持っているけど、事のが入るなら使っているのよね」
「鍵は変えたよ」
「どうして?」
「防犯のためだよ。空きなんだから」
胸の奥がたくなりました。
「じゃあしい鍵を私にもつちょうだい」
い沈黙の、直は「今持ってない」と言いました。
「あなたが交換したんでしょう?」
「業者が管理してるんだよ。事が終わるまで俺の元にもない」
その瞬、私は初めてはっきりいました。
この子は嘘をついている。
鍵を交換したのが本当なら、所者である私へ本も渡さない理由が分かりません。事業者が持っているとしても、私が確認したいと言えば配できるはずです。それなのに直は、私がへづくこと自体を恐れているようでした。
「分かったわ」
私はそれ以問い詰めませんでした。
「とにかく今はくなよ。怪したら困るんだから」
直はそう言い、方に話を切りました。
私はしばらく携帯話を握ったまま座っていました。、私が渡したのはの維持管理を頼むための限定な委任状です。
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鍵を勝に交換し、持ち主をち入らせない権限など与えた覚えはありません。
午、私は引きしの番奥に入れていた茶い封筒を取りしました。には、に押印した委任状の控えがありました。老鏡をかけ、ずつ読み直します。
固定資産税等の支払い続き。
災・震保険の継続。
災害など緊急の修繕配。
庭の維持管理。
郵便物の受領。
それだけでした。
売却、賃貸、第者の居、所者のち入り制限。そのような文言はどこにもありません。
翌、私は桜井さんの相談へきました。
「息子に、を見せてもらえませんでした」
「理由は?」
「今は事だから危ないと。鍵も変えて、業者が持っているから私には渡せないそうです」
桜井さんの表がし変わりました。
「黒田さん、その委任状はお持ちですか?」
私は封筒を差ししました。桜井さんは内容を確認した、「度、権利関係をきちんと確認しましょう」と言いました。
「権利関係?」
「が今も黒田さんの名義なのか、抵当権などがしく付いていないか。まず登記を調べた方がいいといます。それから、齢者の財産管理に詳しい弁護士さんへ相談するのもつの方法です」
弁護士。
その言葉に私は瞬ひるみました。息子と裁判をするような気がしたからです。
桜井さんはそれを察したように首を横に振りました。
「争うためではありません。黒田さんが自分の財産と活を、自分で決めるためです」
その言葉は議なくらい胸へ入りました。
私は、自分では何もできないとい、全部を息子へ預けました。そのは「迷惑をかけたくない」という気持ちから、息子の言葉へ逆らわないようにしてきました。
けれど本当に迷惑をかけないというのは、自分のを丸ごと渡すことなのでしょうか。
「調べます」
私は言いました。
「自分のが、今どうなっているのか」
桜井さんは静かに頷きました。
その、私はゆり法律事務所へ相談予約を入れました。
息子を疑うことよりも、何もらないまま残りのを過ごすことの方が、初めて怖いとったのです。