"「家は俺が守る」息子を信じた母、4年後の衝撃" 第2話
帰れない
「まだいって、どういうこと?」
私は携帯話をへ押し当てたまま尋ねました。医師から帰宅の能性を聞かされたばかりで、のではすでに、台所の窓から朝が差し込む様子までい浮かべていました。ところが直は、その期待を受け止めるどころか、急いで蓋をしようとするような調になりました。
「が傷んでるんだよ。がまなくなるといんだ。根もし悪いし、も湿気がてる。回りも変なんだ」
私は驚きました。入所してからまだです。築数はくても、入院まで私が普通に暮らしていたでした。「そんなに急に悪くなるものなの」と聞くと、「古いなんだから仕方ない」と言われました。
「直せないの?」
「がかかるんだよ。今すぐ急がなくてもいいだろ。母さんは施設にいれば全なんだから」
最の言に、私はを閉じました。確かにここなら転倒してもすぐが来てくれます。事もますし、薬の管理もしてもらえます。無理に帰ってもう度転んだら、直へ迷惑をかけるかもしれない。そう考えると、それ以く言えなくなりました。
「そうね。焦らない方がいいわね」
自分からそう言いました。
それから、直の面会は目に見えて減りました。毎週来ていたのがに度になり、かに度になり、やがて半に度になりました。
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そして目に入る頃には、完全に来なくなったのです。話をしても、「仕事だから」「張が続いている」「今は忙しい」というい返事しか返ってきませんでした。
誕の、施設ではさなケーキがました。職員さんたちが「おめでとうございます」と声をかけてくれ、同じテーブルのたちも拍をしてくれました。私は笑ってお礼を言いましたが、部へ戻ると、真っ先に携帯話を確認しました。
直からは通だけメッセージが届いていました。
《誕おめでとう。今週は忙しい。また連絡する》
私は《ありがとう。体に気をつけてね》と返しました。
その「また」は、来にも来にもなりませんでした。
目になっても、直は度も面会へ来ませんでした。同じフロアには、毎娘さんが来て、緒に堂でお茶をむ女性がいました。曜になると孫たちが訪ねてきて、ロビーで写真を撮っている族もいました。そんな景を見るたび、私はわざとめに自分の部へ戻りました。
寂しいと認めたくありませんでした。
「直には仕事があるから」
「庭もあるから」
「私が元気なら、それでいいのよ」
同じ言葉を何度も自分へ聞かせました。正の写真にも、「あの子、きっと無理して働いているのよ」と話しかけました。写真のの夫は、相変わらず穏やかな顔で笑っているだけでした。
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季節が回巡り、私は歳になりました。杖があればで歩け、薬も自分で管理できるようになっていました。堂まで歩き、入浴もすりがあれば自分でできます。それでも私は施設をようとしませんでした。
は傷んでいる。
直がそう言ったからです。
そんな、施設にしい相談員が来ました。桜井恵さんという歳の女性でした。彼女は私の担当になり、最初の面談で私の活状況を細かく確認しました。薬、入浴、事、、歩。私はつずつ答えました。
最に桜井さんは記録用から目をげました。
「黒田さん、つ聞いてもいいですか」
「はい」
「ここへ、ずっとみたいですか?」
私はすぐに答えられませんでした。
誰かにそんなことを聞かれたのは、初めてだったからです。
「ずっと……ですか」
「はい。今の体状態なら、支援のある宅や、環境をえたご自宅で暮らす選択肢もあります。黒田さん自は、どこで暮らしたいですか?」
私は窓のを見ました。施設の庭にはのが咲いていました。きれいではありましたが、私が植えたではありません。正と緒に選んだ庭でもありません。
「です」
ったよりはっきりした声がました。
「夫が残してくれたへ戻りたいです」
桜井さんは頷きました。
「そのを、最に見たのはいつですか?」
私は答えようとして、止まりました。
。
救急で運ばれたあの以来、私は度も自分のを見ていませんでした。
「息子さんから写真は送られてきました?」
「いいえ」
「修理の見積は?」
「ありません」
「根やが傷んでいるというのは、専業者が確認したんですか?」
「……分かりません」
桜井さんは責めるような言い方をしませんでした。ただ静かに、私の顔を見ました。
「では、度ご自分で確認してみませんか」
胸の奥が、ざわりときました。
その瞬まで、私は考えたこともありませんでした。
直が言う「傷んだ」が、本当にするのかどうかを。