"拾った財布で泥棒扱い――5万円の濡れ衣と反撃" 第8話
全社朝礼の断罪
特別内部監査は、の速さでめられた。
事総務部と監査は、黒田が過にわたって提したすべての経費精算伝票を押収。領収を発したへの覆面調査、記載されていた社関係者全員への話照会が徹底にわれた。
結果は目も当てられないものだった。
架空の取引先接待、私な週末の族ディナー、友との級ランチ——黒田が会社の経費を私物化して正に詐取していた額は、累計で百万円を超えていた。さらに、彼女が「曜の朝に万円入っていた」と主張していたあの財布についても、決定な証拠が突きつけられた。
曜の夜、彼女が族と事をしたのレシートの控えが、監査によって回収されたのだ。支払額は、現でちょうど万円。
彼女は最初から、曜の夜にその万円を使い果たしていた。曜の朝、ロビーに落とした点で、財布のに幣など円も入っていなかったのだ。彼女は元に残ったの領収を使ってから経費精算する腹積もりだったが、財布を拾ったのが敵である森田咲だとった瞬、悪魔のような計略を閃き、実に移したのだった。
そして、運命の曜。
毎第週の曜にかれる、全社同の朝礼。本社の会議には、役員から般社員まで、百名を超える全従業員が然と列をなしていた。
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黒田美保は、最列の業務管理課の列で、落ち着かない様子で爪をいじっていた。ここ数、監査から呼びされて厳しい尋問を受けていたものの、彼女はまだ「単なる記載ミス」「私な交際費と混同しただけ」と言い逃れができるとをくくっていたのだ。
壇にがったのは、事総務部だった。
「業務連絡に先ち、全社に関わるな規律違反および名誉毀損事案について、公式な調査結果を報告いたします」
マイクを通した々しい声が、静まり返った広なホールに響き渡った。
「る曜の朝、経理支援課の森田咲社員が拾得した財布に関して、業務管理課の黒田美保主任より『現万円を窃盗された』との虚偽の申告が社内において公然となされました」
会がざわめいた。黒田の背がビクリとねがった。
「ビル管理の客観記録、防犯カメラの映像解析、ならびに第者関による調査の結果、森田社員による正為の事実は切せず、彼女は規定に則った極めて模範な対応をっていたことが完全に証されました」
部の線が、壇から黒田のへと真っ直ぐに突き刺さった。
「方で、黒田美保社員による過の経費精算を精査した結果、期にわたる架空接待費の正請求、ならびに私費の会社経費への付替えが数発覚いたしました。
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その総額は百万円に達します」
どよめきが、津波のようにホール全体を呑み込んだ。
「嘘だろ……」「横領してたのか……?」
「さらに極めて悪質なのは」部の声が層く、りを孕んで響いた。「黒田社員は自らの正を隠蔽し、厳格な審査をっていた森田社員を業務から排除する目で、図に虚偽の窃盗被害を捏造し、勢の面で同僚の尊厳と名誉を著しく傷つけました」
黒田の顔から、すべての血の気が引いていった。膝がガクガクと震え、っていることすらできずにの席のパイプ子にすがりつく。
「本付をもって、就業規則第条に基づき、黒田美保を主任職から解任、職カの懲戒処分とし、正受額の全額括返還を命じます。また、今の刑事告訴についても顧問弁護士と協議をめております」
「ひっ……あ……」
黒田の喉から、みっともない引きつった鳴が漏れた。
「最に」部は全員を見渡した。「客観な証拠を確認することなく、声な告発に流され、無実の同僚に対して淡な態度を取り、孤させた職環境のあり方について、全社員がく猛省することを求めます。以です」
朝礼が終した瞬、百のえ切った線が斉に黒田へと注がれた。
かつて彼女に取り入り、緒になって咲を避けていた同僚たちも、汚らわしいものを見るような目で顔を背け、蜘蛛の子を散らすようにれていく。
咲は列の方で、背筋を伸ばし、静かにその景を見届けていた。
りも、復讐のもなかった。ただ、自らの尊厳と、娘に誓った「正しいき方」を守り抜いたという、静かで確かなみが胸に残るだけだった。