"拾った財布で泥棒扱い――5万円の濡れ衣と反撃" 第6話
防犯カメラの角と自然な空
業務からされて目の午。オフィス内の空気は依然として澱み、咲の周囲だけが真空帯のようにえ切っていた。過伝票のスキャン作業という名目の隔。を枚めくる乾いた音だけが、自席の周辺にさく響いていた。
そんな、内線話がく鳴った。受話器を取ると、事総務部の岡部からだった。
「森田さん、今すぐ第面談へ来てください。ビル管理会社との映像確認が終わりました」
咲は作業のを止め、ちがった。フロアの線が斉に背に突き刺さるのをじたが、取りを乱すことなく廊へた。
第面談には、岡部と、ビル管理会社の責任者、そして警備員の桜井が同席していた。机のにはノートパソコンがかれ、止された防犯カメラの映像が映しされていた。
「森田さん、映像を系列で確認しました」岡部が画面を指差した。「まず、曜の朝分。階エレベーターホールのカメラです」
再ボタンが押された。画面の側から、社してきた咲が歩いてくる。分、ベンチの端に置かれた茶の物体に気づき、を止める。そして膝を折り、両で財布を持ちげる姿がはっきりと記録されていた。
「ここから分まで、森田さんはそので財布を両に持ち、周囲を見渡しています。
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そして巡回の桜井さんを見つけ、声をかけている。この、財布のをけるような作、ポケットや鞄にを入れるような自然なきは切確認できません」
桜井がく頷いた。「私が駆けつけたも、財布はしっかり閉じた状態でした。森田さんは指本、に触れていません」
「ありがとうございます」咲は静かにをげた。胸の奥に詰まっていたたい鉛が、わずかに軽くなる。
「ただし」岡部が言葉を継いだ。「カメラの設置角度の関係で、ベンチの背もたれのがわずかな角になっています。元が完全に鮮とは言い切れないため、報告の表現としては『品を抜き取る作は確認されず』という形になります」
「分です。私がでを抜いたという黒田主任の主張が虚偽であることは、これでです」
「ええ。そしてもうつ、な事実が判しました」岡部はキーボードを操作し、別のカメラの映像をいた。「階受付カウンターの映像です」
分。エレベーターからりてきた咲と桜井が、受付カウンターで黒田に財布を渡す面が映しされた。黒田は財布の観だけを撫でるように確認し、類に殴りきでサインをすると、財布を脇に抱えてにちっていく。
「問題はその直です」岡部の声がくなった。
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「黒田主任は財布を受け取った、自分の席がある業務管理課へ直していません。分、彼女は階へがる非常階段へ向かい、フロアの監カメラから姿を消しています。彼女が自席に戻ったのは、分過ぎ。始業チャイムが鳴り終わったでした」
咲は目を細めた。「……分も、どこへっていたのですか?」
「階の非常階段の踊りと女子トイレには防犯カメラがありません。彼女がその空の分に何をしていたのかは、映像からは追えません。しかし、受付で受け取ってから自席で『おがない』と騒ぎてるまでに、分以の自然な差がしたことは紛れもない事実です」
「つまり」咲は静に指摘した。「黒田主任が『森田さんに渡された直に確認したら空だった』と主張していること自体が、に破綻しているということですね」
「その通りです。客観な証拠を見る限り、森田さんが現を抜き取ったと認める余はありません」
岡部はそう断言した。しかし、彼の表はれなかった。
「だが、森田さん。これで君の容疑は事実れたが、社内の空気はそう簡単には変わらない。黒田主任はこの結果を伝えても『じゃあ私の万円はどこへ消えたのよ!』と頑として譲らないだろう。映像に映っていない所で何が起きたか証できない以、彼女を虚偽申告で処分することも難しいのが現状だ」
「……このまま、うやむやに終わらせるおつもりですか?」
「会社としては、これ以の追及は難しい。君を元の業務に戻すことで打ちにしたいと考えている」
咲の胸に、ややかなりが再び湧きがった。無実が証されても、濡れを着せられた屈辱と、勢ので受けた侮辱の落としは誰として取らない。それが組織の事なかれ主義だった。
しかし、事態はここで終わらなかった。
面談のドアが控えめにノックされ、扉の隙から現れた物の姿に、咲は目を見張った。
経理支援課の輩、田梨奈だった。彼女は胸元に分いのファイルを抱え、緊張で顔を張らせながら、部のを見つめていた。