"夫の愛人を家に招いた義母、3日後の悲鳴" 第9話
パークハイアット京の夜景
ガラガラガラ……。 型スーツケースの輪がてるく規則な音が、リビングダイニングへと響き渡った。 卓でデザートのメロンをつついていた幸子と結菜が、弾かれたように顔を向けた。
現れたのは、完璧にトレンチコートを着こなし、片にPCバッグを提げ、を凛と伸ばした桜の姿だった。 その姿は、夜逃げする被害者などでは断じてなかった。まるで、ファーストクラスに搭乗するためにプライベートジェットへ向かう、誇りきエグゼクティブそのものだった。
幸子の顔が、予の景に引き攣った。 「あ、あんた……! その荷物、体何なのよ! こんな夜に、どこへく気なの!?」
桜は、ダイニングの入りでを止めた。 スーツケースのハンドルにを置いたまま、卓に座る見苦しいの女を、からへと徹に見ろす。 しかし、その線は彼女たちの顔に秒たりとも留まらなかった。 汚された器、べ散らかされた材を瞥しただけで、彼女は乾いた、の起伏を切排した声で、たった言だけを放った。
「拓也に、私の方から先にてったと伝えてください」
「は……? ちょっと、桜さん! 待ちなさいよ!」 幸子がちがろうとしたが、桜は度も振り返ることなく、玄関へと歩みった。
バアンッ!!
タワーマンションのな玄関ドアが、容赦のない音をてて閉ざされた。
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気圧差でリビングのガラス扉がガタガタと激しく震え、幸子と結菜は息を呑んでち尽くした。
にた桜は、エレベーターに乗り込み、駐へとりた。 暗証番号を変えようなどとは微もわなかった。そんな細をする必はない。 このタワーマンションが、誰ので維持され、誰の名義でしているのか――それを骨の髄までいらせるための「本物の続き」が、これから始まるのだから。
エンジンを始させると、ベンツのナビゲーションシステムが起した。 『目を設定してください』 「――宿、パークハイアット京」
夜の首都を滑るように駆け抜け、宿の超層ホテルへと向かう。 窓をわずかにけると、京湾からの夜が吹き込み、髪にこびりついていたあのの息苦しい空気を、未練なく吹きばしていった。
パークハイアット京のフロントで、桜は自らのブラックカードを提示し、最層階のエグゼクティブ・スイートルームの期滞続きを済ませた。 井のい広々としたバスルームで、いシャワーを浴び、質なバスローブにを包んで窓辺につ。 には、宝を散りばめたような宿の摩楼の夜景が、どこまでも広がっていた。
桜はベッドサイドテーブルのスマートフォンをに取り、源ボタンを押しした。
『源をオフにしますか?』 迷いなく【はい】をタップする。 画面が漆黒に沈んだ。
結婚して。 夫からの無メッセージに怯えることもなく、義母の理尽な求に胃を痛めることもない。 誰にも邪魔されない、完璧な自分だけの夜。 キングサイズのフカフカなベッドに横たわると、桜は何ぶりか分からないほどく、らかな眠りへと落ちていった。