"夫の愛人を家に招いた義母、3日後の悲鳴" 第6話
絶対零度の線と棒猫の狼狽
理のカウンターに置かれたケーキの箱がてた乾いた音が、やかに談笑していたダイニングの空気を瞬で叩き割った。
「……え?」 ワイングラスを傾けていた結菜のきが止まり、その線が無識に暗い廊の入りへと向けられた。 暗がりのから、音もなく姿を現したの女性。 無駄のないシルエットのダークスーツにを包み、微だにしない徹な差しで卓を見ろす桜の姿を認めた瞬、結菜の顔から血の気がサーッと引いていった。
「お、お義母様……あの方……」 結菜の声が掠れ、激しく狼狽した瞳が幸子へと向けられた。 幸子は怪訝そうに首を巡らせ、廊のから歩みてきたのが桜だと認識した瞬、に持っていたのトングをガチャンと理の板に取り落とした。
「さ……桜さん!? あ、あんた、どうしてこんなに……!?」 幸子は腰を抜かさんばかりに驚愕し、子をガタガタと鳴らしてちがった。 先ほどまでのふんぞり返った態度はどこへやら、目を黒させながら、必に自分の体を盾にして結菜を隠そうとする。 「き、今はずっと遅くなるって……夜過ぎまで役員会議があるって言ってたじゃないの! なんで急に帰ってくるのよ!」
桜は答えなかった。 歩、また歩と、ヒールの音を響かせながらダイニングテーブルへとづいていく。
広告
その歩みには、取り乱した様子も、声を発する気配も微もなかった。まるで、祥事を起こした子会社の察に訪れた徹な監査役のように、卓の惨状をサーチライトのような線でゆっくりと検分していく。
イタリアから取り寄せたウェッジウッドの限定ディナープレートのには、い散らかされた松坂牛の脂がこびりつき、セラーで寝かせていた特級ワインのボトルは、すでに分のまで減っていた。 そして、桜のたい線が、テーブルのに慌ててを隠そうとした結菜の首へと突き刺さった。
「その女は、誰ですか」
く、質な声だった。 決して鳴り散らしたわけではない。しかし、その声に含まれた絶対な威圧に、結菜はビクッと肩を震わせ、子のでを縮こまらせた。
幸子は乾いた唾を何度もみ込み、引き攣った笑みを浮かべながら、見え透いた嘘を並べて始めた。 「あ、あのね、桜さん! 変な誤解をしないでちょうだいね! この方はね、うちの拓也の会社の……そう、事なクライアントの輩さんなのよ! 今、くまで仕事で来てくれたから、私が『夕飯でもべていきなさい』ってお招きしただけなの! ほら、拓也の仕事関係のを無にはできないでしょう?」
「クライアントの輩?」 桜の元に、氷のような嘲笑が浮かんだ。
広告
「クライアントの輩が、なぜ私のの鍵をけてがり込み、私のワインセラーから勝にボトルを抜き、先私が拓也のために百万円で買った限定のメンズウォッチを首に巻いているのかしら?」
「ひっ……!」 結菜の喉からい鳴が漏れた。 彼女は弾かれたようにちがり、恐怖で見かれた目を幸子に向けた。 「お、お義母様! 話が違うじゃないですか! このマンションも、この計も、全部拓也さんが自分の会社のおで買ったって言ってたのに……!」
「黙りなさい、結菜ちゃん!」 幸子が切り声をげて結菜を制止した。 もはや言い逃れが能だと悟った瞬、老獪な老婆は、それまで被っていた「良き姑」の仮面をかなぐり捨てた。 首筋に青筋をて、腕を組んで桜を睨みつける。き直りの怪物の本性を剥きしにしたのだ。
「ええ、そうよ! あんたが全部見たんだから、隠す必もないわね! 結菜ちゃんとうちの拓也は、真剣にお付きいしてる特別な関係よ! でもね、こうなったのは全部あんたのせいじゃないの!」