みかん小説
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"夫の愛人を家に招いた義母、3日後の悲鳴" 第5話

卓のと、私のワイン

リビングのアーチ状の入りのにを潜めた瞬、桜の腔を濃で贅沢な気が満たした。 級鉄板焼き割烹の厨から漂うような、質な発酵バターとA5ランク牛の甘い脂が焦げる芳しい匂い。そこに、濃な産ウニの磯のりがなりっている。

界の先に広がっていたのは、桜がこののために何百万円も投じて設えた、眩いばかりの景だった。 イタリア直輸入の特注クリスタルシャンデリアが、部全体を昼のように照らししている。 そして、最級ウォールナットの枚板で作られたダイニングテーブルを挟んで、の女が楽しげに向かいって座っていた。

桜に背を向けて座っているのは、義母の幸子だった。 この、桜に対して度も見せたことのない、媚びへつらうような満面の笑みを浮かべ、のトングでカリッと完璧に焼きげられた松坂牛のサーロインを、向かいの女の取り皿へと優しく取り分けている。

「さあさあ、結菜(ゆな)ちゃん、慮しないでこれもべなさい! 今はお母さんがね、座の越で特別に取り置きしてもらった最級の松坂牛なんだから! のレストランでべたらいくら取られるか分からないわよ。普段のお仕事で疲れてるんだから、こういうにしっかりスタミナをつけなきゃね!」

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幸子の声は、聞いているこちらが鳥肌をてるほど猫なで声で、甘ったるかった。

向かいに座る女――結菜と呼ばれた女は、代半に見えた。 艶やかな栗のロングヘアを片方の肩に流し、鎖骨が胆にいたピンクのシルクブラウスをに纏っている。 「まあ! ありがとうございます、お義母様! 私なんかにこんなによくしてくださって……!」 結菜は嬌たっぷりに首を傾げ、が咲くように微笑んだ。 「拓也さんがいつも『母さんの料理は世界だ』って自してましたけど、本当にその通りですね! つレストランのシェフよりずっと美しいです! 拓也さんは、お義母様みたいな素敵なお母様がいて、本当に幸せ者ですね」

「あらやだ、結菜ちゃんったら! どうしてそんなにらしいことばかり言ってくれるのかしら! もう、すっかり気に入っちゃったわ! 気に入ったなら、これからは毎来てご飯をべなさいな。ここはあんたのも同然なんだからね!」

幸子の言葉に、結菜はクスクスと品よく笑いながら、優雅なつきでワイングラスを持ちげた。 グラスので揺れていたのは、いルビーの液体――桜がフランス・ブルゴーニュの特級畑から直接取り寄せ、ワインセラーで何も切に熟成させていた、本数万円のヴィンテージワインだった。

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そして――結菜がグラスを元に運んだ、まさにその刹だった。 シャンデリアの眩いが、彼女の華奢な首にり注ぎ、ギラリと酷な属の輝きを反射した。

桜の瞳孔が、極限まで収縮した。 線が、その首の点に鋭く突き刺さる。

それは――【IWC・ポルトギーゼ・パーペチュアルカレンダー】。 いミッドナイトブルーのアリゲーターレザーストラップに、複雑構を搭載した精緻なブルースティール針。 桜が、その計を見違えるはずがなかった。

ほんのヶ。 拓也の歳の誕に、彼がに膝をつかんばかりの勢いで懇願してきたのだ。 『桜、頼むよ! ITベンチャーの社が物の計をつけてたら、の投資から元を見られて商談がまとまらないんだ! これさえあれば、俺は絶対に億円の資を引っ張ってこれるから!』

夫のけない涙に絆され、桜が自の役員報酬から、百万円を括で支払って買い与えた限定モデルのメンズ級腕計。 『もったいなくて普段はつけられないよ! の宝物にする!』と泣いて抱きついてきた夫の計が――今、目のに座る見らぬ若い女の首に、ブカブカのサイズで、見せびらかすように巻き付けられていた。

その瞬、桜のの奥で、カチリと何かがれる音がした。

りではなかった。

絶望でもなかった。 激しいの炎ではなく、絶対零度の氷が、頂部から爪先まで気に流れ落ちていくような、徹極まりない「覚」だった。

女は、桜の稼いだで買ったワインをみ、桜が全額ローンを払っているタワーマンションの子に座り、桜が契約した宅配サービスから届いた最級の牛を咀嚼している。 そして義母は、その棒猫を「未来の嫁」としてもてなし、本物の主である桜をATMとして嘲笑っていた。

暗がりので、桜は静かに歩を踏みした。 に提げていた級ケーキの箱を、理のカウンターのに置く。 ――トン。 静寂を破る質な音が、豪華なダイニングルームに響き渡った。

の女が、凍りついたようにこちらを振り返った。

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