みかん小説
本棚

"義実家同居を勝手に決めた夫、私は別の新居へ引っ越した" 第13話

最の枚だけは、自分で読んだ

先は婚届の用を正吾のへ置いた。

「署名のに、かれている内容をずつご確認ください」

正吾は用を見た。

それまでの話しいでは、何度も「そんなの聞いてない」「らなかった」と言っていた男が、このときだけは指で文字をなぞるようにして、からまでゆっくり読んだ。

義母も話をかけてこない。

誰も横から話しかけない。

会議は静かだった。

最まで読み終えると、正吾は自分の欄へ名をいた。

「ちゃんと読んだからな」

誰に向けた言葉なのか、私は分からなかった。

私に言ったのか。

引っ越しの見積もりの、内容も見ずに署名した自分へ言ったのか。

の結婚活の最で、正吾はようやく枚のを、自分の目で読んでから名をいた。

私も署名した。

それから共同座の分配や、郵便物、名義変更について説を受けた。

今度の正吾は、先が話しているずっと顔をげていた。

つ説されるたびに頷き、分からない部分は質問した。

私がに欲しかった正吾の姿が、もう夫婦が終わるに初めてそこにいた。

話しいが終わったのは午を過ぎた頃だった。

義父は帰り際、私のでち止まった。

「苗さん、体に気をつけてな」

たった言だった。

に義実から帰るときにも、義父は「運転気をつけてな」

広告

と言った。

同じくらいい言葉だったが、このは違った。

義父はちゃんと私の顔を見ていた。

義母は私と目をわせず、義父のろについて事務所をていった。

正吾は最に度振り返った。

何か言いたそうだったが、結局何も言わなかった。

事務所をると、の夕方のが駅の通りへ差していた。

私は歩きながら、ゆりさんに話をかけた。

「終わりました」

「お疲れさま。よく頑張ったね」

その声を聞いた瞬、目の奥がくなった。

しいというより、かずっと握りしめていたを、やっとくことができたような覚だった。

にしい部へ引っ越したとき、窓のの桜はまだつぼみだった。

今はが終わり、若い葉が始めている。

季節はつ先へんでいた。

部へ帰ると、私は引きしから引っ越し業者の作業確認を取りした。

つに折った跡がくっきり残っている。

正吾自が「業者に聞けば分かる」と言い、自分で呼びした証拠だった。

私はしばらくそのを見てから、封筒へ戻した。

もう誰かに見せることはないだろう。

の夜を入れるため窓をけると、からしたいが入ってきた。

部は静かだった。

誰にも夕飯の品数を聞かれない。

誰にも翌朝の起を決められない。

議なくらい、その静けさが怖くなかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: