"義実家同居を勝手に決めた夫、私は別の新居へ引っ越した" 第8話
私がいなくなった翌朝
翌朝過ぎ、正吾から話が来た。
私はしい部の台所でトーストを焼いていた。会社までは徒歩分なので、いつもと同じ分に起きてもに余裕がある。
「苗、ゴミ袋ってどこ?」
挨拶もなく、正吾はいきなり聞いた。
「ゴミ袋?」
「今ゴミのなんだけど、母さんがいつもの所にないって」
「お母さんののゴミ袋なら、お母さんがってるでしょ」
「苗が来たら片付けてもらうつもりで、台所いろいろかしたらしいんだよ」
ろから義母の声がした。
「正吾、くしなさい。収集来ちゃうわよ!」
「分かってるって!」
正吾が義母へ鳴り返す。
同居目にして、もう空気が変わっていた。
「昨も変だったんだぞ」
正吾は愚痴をこぼし始めた。
夜過ぎに帰宅すると、玄関から廊まで段ボール。夕飯は用されていなかった。
「母さん、飯は?」
「苗さんが来るとってたから」
結局、義父がコンビニへき、分の弁当を買ったという。
着替えようとすればが見つからない。
「どの箱?」
「らないわよ。自分で探して」
朝になれば朝がない。
洗濯物を干せと言われる。
ゴミをせと言われる。
義母が私へ割り振っていた仕事が、そのまま正吾へ戻っただけだった。
「それでさ、駅までくもないんだよ。親父はもう仕事で使ってるし」
広告
「バスがあるでしょう」
「に本しかないんだよ。会社まで分かかる」
正吾は満そうに言った。
「こんなにかったっけ?」
私は返事をしなかった。
に私が「義実から会社までは半く」と言ったとき、正吾は「慣れれば平気」と答えた。
自分が通うことになるまで、度も本気で考えていなかったのだ。
「今の夜、来られないか?」
「かないよ」
「母さんも落ち着かないって」
「会社に遅れるから切るね」
私は話を切り、トーストにバターを塗った。
そのの夜は鮭を焼き、松菜を炒め、豆腐の噌汁を作った。
品。
誰にも数えられない品だった。
いとも濃いとも言われない。
私は自分がべたいにした。
ぶりに、自分の台所で自分のためだけに料理をしている気がした。
、正吾からLINEが来た。
《会社で引っ越しどうだったって聞かれた。おのこと何て言えばいいんだよ》
私はしばらく考えてから返信した。
《本当のことを言えばいいとう》
既読はついた。
返事はなかった。
正吾にとって困るのは、妻がいないことではなかった。
妻がいない理由を、へどう説するかだった。
、のマンションの退ち会いで、私は正吾と顔をわせた。
管理会社の担当者が鍵を確認し、最に笑顔で言った。
「奥様のご希望でご実へ移られるそうで。
広告
今どき珍しいですね。親孝ですね」
私は正吾を見た。
正吾は窓の方へ顔を向けた。
奥様のご希望。
正吾は管理会社にも、そう説していた。
義母には「苗も解した」。
管理会社には「妻の希望」。
私の言葉は、相によって都よくき換えられていた。
担当者が帰った、私は聞いた。
「どうして私の希望だなんて言ったの?」
「その方が話がいだろ」
そして正吾は、急に優しい声をした。
「なあ。いつ戻る?」
「戻らないよ」
「母さんも反省してるから」
その瞬、正吾のスマートフォンが鳴った。
義母だった。
受話からきな声が漏れた。
「正吾、苗さんいつ来るの? 今は連れて帰ってきなさいよ。お昼の支度どうするの!」
反省しているの言葉ではなかった。
正吾は慌てて音量をげた。
私は鞄を持ち、玄関へ向かった。
もう度、正吾の説を信じる理由はなかった。