"義実家同居を勝手に決めた夫、私は別の新居へ引っ越した" 第1話
31回目の話
「まだこっちに来ないの? くしてね」
回目の着信にた途端、義母・睦子の苛った声がにび込んできた。、引っ越し当の午過ぎ。スマートフォンの画面には、昼過ぎから続いた義母からの着信が件、ほとんど隙なく並んでいた。
私はそのとき、段ボール箱が積みがった部のに座っていた。窓の向こうには、まだのない桜の枝がのに揺れている。蔵庫も洗濯も届いたばかりで、カーテンさえ今朝取り付けたばかりだったが、ここは違いなく私が自分で選び、自分のおで借りた部だった。
「正吾さんの荷物なら、もう届いていますよね」
私がそう言うと、話の向こうで義母が瞬黙った。
「届いたわよ。でも苗さんが来てないじゃない。段ボールだってまだけてないし、夕飯の支度だってあるのよ」
義母のろでは、箱をでずらすような音がしていた。私が来れば当然、荷解きをし、台所をえ、そのの夕飯まで作るとっていたのだろう。私は窓のを見ながら、できるだけ静かな声で答えた。
「正吾さんが帰ったら、緒にけてください」
「え?」
義母の声が裏返った。その瞬、何かがに落ちる音がした。私はそれ以説せず、「それでは」とだけ告げて話を切った。
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夕方分、今度は夫の正吾から話がかかってきた。
「母さんからすごい数の連絡が来てるんだけど。まだそっちで片付けしてるのか?」
会社をて駅へ向かっているらしく、受話の向こうではの音との音が聞こえた。正吾はまだ何も疑っていない声で続けた。
「荷物、全部運んだよな?」
私は部を見回した。本棚には私の本が並び、仕事机には販促物の見本帳が置かれている。さな台所には、しく買った鍋とマグカップがつではなくつだけ置いてあった。
「うん。居にね」
正吾の音が止まった。
数秒の沈黙のあと、い声が返ってきた。
「……え?」
夫が考えていた「居」と、私が今いる「居」は、同じ所ではなかった。
こんなことになった理由は、か半まで遡る。
私は栗原苗、歳。ドラッグストアのチェーン本部で販促の仕事をしてになる。に並ぶPOPやチラシ、季節ごとの売り装飾を作るのが仕事で、先はで最も忙しい。
夫の正吾は歳。械部品を扱う商社の営業職で、結婚してになる。最初のは正吾の会社の借りげ宅にみ、その、駅から徒歩分の賃貸マンションへ移った。とも働いていたので、活費は共同座に入れると結婚に決め、正吾が毎万円、私が万円を入れていた。
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きな喧嘩をする夫婦ではなかった。曜には緒にスーパーへき、正吾がカートを押し、私が夕飯の献を考える。私がをした夜には、器用なつきでお粥を作ってくれたこともある。
だから私は、ずっと普通の夫婦だとっていた。
ただつだけ、結婚当初から疲れることがあった。
義母の睦子だ。
週末になると必ず話がかかってきて、第声は決まっていた。
「苗さん、今は何作ったの?」
鶏の照り焼き、ほうれんのおひたし、噌汁。そう答えれば、「それだけ?」と言われる。品なら品にしなさい、野菜がない、正吾は昔から筑煮が好きなのだから作ってやれ。私が「今度作ります」と言えば、「今度じゃなくてにでも」と返される。
話を切った、私は何度も正吾に言った。
「悪気がないのは分かってる。でも、毎週献を聞かれるのは疲れるよ」
正吾はいつもスマートフォンから目をげずに笑った。
「適当に答えとけばいいだろ。母さん、悪気ないから」
その言で終わった。
義実は隣のにあり、でほどかかる。に度、曜に事へく程度だったから、私はできていた。話なら切れば終わる。義母が台所にっているわけでも、私の蔵庫を覗くわけでもない。
あの頃の私はまだらなかった。
私たち夫婦がうまくいっていたのではなく、という距が、私の活を守っていただけだったことを。